クラシック27 蛯原英夫選手 レポート


2018WBSAOYランキング2位、同JAPANオープン2位。

いずれも霞ヶ浦内外に名を馳せるトッププロをおさえての成績、十分に誇れるものだろう。だが当の本人はまったく満足してはいない。
「もう2位はいらない」

10月20日未明。
赤く輝くチャージャーボートが水面に浮き、300馬力エンジン、ベラードに静かに火が灯る。

「プラの手応えは厳しい。5バイトあれば上出来」。
日に日に冷え込みが厳しくなる秋の霞ヶ浦。タフな試合が容易に想像できる状況下、WBS2018シーズン最後の戦いの火蓋が切って落とされた。

ファーストポイントはスタート地点からほど近い西浦の流入河川。
河口ではエサ釣りの方にワカサギが釣れている様子。河口を軽くチェックした後、上流に向かう。プラで好反応だったというスポットを手を変え、品を変え狙うが反応はない。途中、後ろから上がってきた田中プロ艇が先行を打診してきたため先を譲り、流入河川を出ることに。
「水温が上がってから来たい」

大きく移動し、向かったのは東浦のとあるドッグ。掴んだタックルは自身プロデュースのロッド「エアリーフリップ」と「ダブルモーション2.8」。これをフリーリグで撃ち込んでいく。

8時15分、デッキ上にバスが抜き上げられる。待望の一本目がライブウェルに収められた。
「アタリが出ない。違和感を合わせた」

ドッグを後にし、向かったのは杭が乱立するポイント。
「ここはアタリが果てしなく遠い」
一時間半をこのエリアに費やしたが、その言葉どおり魚からの反応はなかった。

ただ、驚いたのはノーバイトだろうと、数百本はあろう杭一つ一つを、終始精度はぶれずに撃ち続けた事だ。この二日間、確認できたキャストミスは三回。キャストのほぼ全てがバスのストライクゾーンを捉えているであろう完璧なものだった。

東浦を出て向かった先は石積みにブッシュが絡むポイント。ここではバスエネミー3.5の3.5gテキサスで撃っていく。と、直ぐに二本目がヒット。
「プラ通りの釣れ方だった」


その8分後、バスエネミー3.5にビッグバイト!
慎重なランディングの末上がってきた三本目はキッカーフィッシュ!!

立て続けのバイトに起死回生のキッカー、叫ばずにはいられない一尾であった。
「ブッシュではなく、石で食ってきた。今日はそういう感じかも」

その後は別の石積みへ移動。一時間、このエリアに費やすも魚からの反応はない。

さらに移動し、入ったのはテトラがあるポイント。ダブルモーションのフリーリグで撃っていく。違和感を感じ合わせるも、ワームがズレて帰ってきた。

フォローを、とデッキを見るとネコリグ(ツインテイルリンガー)が目に入った。
バイトのあったテトラにネコリグを入れること二投目、先程と同様の違和感を捉え四本目をキャッ
チ。


「あと一本! あと一本取れればまだ分からない!」
その一本を求めて試行錯誤するが、その後蛯原プロのロッドが明確なアタリを捉えることなく終了。

3815g/4本 暫定二位(トップとの差70g)で初日を終えた。蓋を開けてみればWBSの猛者達をもってしても、リミットメイクゼロというタフすぎるコンディションだった。

二日目
昨日よりも風が強く、一段と冷え込んだ。

「昨日は朝一を外したから、今日は別のエリアへ行く」。

5時51分スタート。

西浦を抜けたあたりから北寄りの強風が吹いており、他選手が波に苦戦する中、蛯原プロの操るチャージャー210エリートは易々と走り抜けて行った。

長年210エリートを愛用してきた蛯原プロの操船技術と、チャージャーとして新たに生まれ変わった210エリートの走破性を感じた瞬間でした。

ファーストポイントは下流域の石積エリア。
時おりスピナベを織り混ぜつつ、バスエネミーのテキサスで撃っていく。

途中にある水門が気になり、パワーポールを下ろし、ネコリグ(ツインテイルリンガー)でじっくり狙う。水門の際、奥、手前と細かく刻んだ後、横の護岸に放ったキャストでバイト!

7時12分、貴重なキーパーをキャッチ。

これでトップとの差をひっくり返した。その後は石積に戻り、バスエネミーを撃っていく。
と、バイトあり。歯形が付いて戻ってくる。

フォローや入り直したりもしたが、反応はなかった。
「バスだったらデカそうだった。」

次に入ったのは前日に一尾キャッチしている東浦のドッグ。

昨日同様にダブルモーションをフリップしていくと、ワームのパーツを取られたり、シンカーに歯形が付いたりと乗らないバイトが数回ある。

冷え込みのせいか、食い渋ってる模様。
東浦の杭群を撃った後、入ったのは前日連発した石積。すると前日同様、着いてすぐに二本目がライブウェルに収められた。
バスエネミーのテキサスだ。

石積をテキサスとクランク(ワイルドハンチ)で流した後、12時06分東岸の石積に入る。前日に相当丁寧に撃ち、ノーバイトだったエリアである。

「釣れなかったのは昨日だけ。プラの段階から入る度にデカイのが釣れていたエリア」

流し始めて直ぐに風向きが変わり、追い風から向かい風になる。丁寧にゆっくり流せるので、好条件の様に思えた。荒れてる湖面、帰着時間を考えると13時頃までが釣りができる限界だろう。

二本目からノーバイトの時間が続き、帰着までの焦りが出てもおかしくない状況下だが、キャストはブレない。

12時48分、バスエネミーのテキサスにバイトがあり、軽くテンションがかかるもスッポ抜け。
しかし、冷静に進行方向にある杭に、テキサスを投じる。

絡んだロープを乗り越えた瞬間、蛯原プロのロッドがバスの上顎を捉えた。
バスをいなし、水飛沫が飛ぶ、デカイ!!ランディング体制に入り、無事にキャッチ!
三本目はキロオーバーのキッカーフィッシュだ!

その後も諦めずに時間ギリギリまで粘るもタイムアップ。
帰着してみると、やはり昨日以上のタフコンディションだった様子。

だが、暫定一位の江尻プロも三本持っているとのことで、結果が分からなくなってきた。

直前でウェイインした今井プロは五本のリミットを揃え、一瞬肝を冷やしたが、何とか抜き去り暫定トップ席へ。

最終ウェイインとなる江尻プロの取り出す魚に注目が集まる。
一尾、二尾と取り出す魚はキーパーサイズ。そして運命の三尾目、これもキロはなさそうだ。そして、計りが示した数字は1465g!蛯原プロの逆転優勝!!!

こうして二つ名「豪腕」の文字通り、優勝をもぎ取った蛯原プロの釣りを二日間見させて頂きました。

一番驚きだったのは、そのキャスト精度の高さ。

タフな試合ということもあり、バイトが遠い時間が続く事が多々あったにも関わらず、終始キャストにブレが見られなかったのは驚愕です。

そして「プロ」としての意識の高さ。釣りも、それ以外の面でも魅せる事を考えていらっしゃる。故のファンや仲間の多さなんだと思いました。

貴重な体験をさせて頂いた蛯原さん、二日間本当にありがとうございました。

●プレスアングラー:袖山敦志

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