WBS2014 2nd レポート後編


前編より続く・・・

●二日目

この日も朝は寒かった。

空には厚い雲が……。

風も冷たい。

だが、予報は初日を上回る夏日というものだった。

 

そんな中、25艇のボートは土浦新港に降り立って行った。

21

二日目の帰着は1stが13時30分。

初日より1時間早い。

だから、とうわけでもないが、

二日目のスタートは早かった。

5時前に完了。

 

てか、今の時期ではこれが当たり前かも。

 

明るくなったレイクに25本のウェイクを残して、

運命の二日目は始まったのである。

 

興味は一点!

誰が勝つのか?

トップの蛯原チームが逃げ切るのか?

それとも橋本チームが北浦で爆発するのか?

もしくは2013年A.O.Y.の小田島チームがマクリを決めるのか?

 

蛯原チームの貯金は確かにアドバンテージだが、

それが逆に作用することもある。

逃げ切りは最高に難しい。

 

「勝てる! 勝ちたい!」と思った瞬間、

魔物が取り付く。

 

マクるチームの方が有利だという説の裏付けはそこにある。

 

釣りは気配を消して気楽に釣った方が絶対に釣れる。

根拠はないが、間違いない。

 

要は、その境地を作れるかどうかである。

 

欲を捨てて撃たれたリグに魚は食いつく。

 

無心に釣れる心根を持ったアングラーに本当の強さは宿る。

 

とにかく、釣りが好きなら、

いったん糸を垂れれば、

金や名誉を忘れて、釣れる悦びだけを求めるものである。

 

さとて、そんなゴタクはともかく、

二日目も同じメンバーでレイクをパトロールした。

 

しかしこの日は私のGTIを出した。

有難いことにこの取材で120000kmの区切りを迎えた。

 

土浦からコンビニ経由で一気に恋瀬川に…

と、ふれあいランド前で大藪厳太郎・成田紀明チームをハケーン。

 

しばし取材して、当初の目的地・恋瀬川に。

 

すると

いました!! 蛯原チーム。

ゼロダンだろうか、真剣に撃っている。

刺激してはならないので遠目に眺める。

22

すると、小ぶりなキーパーを2本、

立て続けに抜いた。

しかし、あの魚が残るようではダメだろう。

 

「昨日より全然ダメだ」

 

そう呟いた蛯原選手。

我々に一抹の不安が過った。

 

しばし後、我々は移動した。

それから数時間後、このチームにドラマが起こるとは、

まさに「神のみぞ知る」であった。

 

そして北浦へ。

橋本チームを探す旅である。

23

すると、通称「メルヘン前」でハケーン!

沖を流している。

周囲には多数のボートが。

この日は他団体の試合も行われていたのである。

「あの人たち、一個一個の石を知り抜いていますよ」

橋本選手は試合後にそう語っていたが、

果たしてライブウェルには何本の魚がいるのか???

 

そこから北浦を下り、北利根、常陸利根の水門まで下って、

誰も発見できず。

 

引き返して北利根で麻生洋樹・海老原直人チームを発見できたのみ。

二日目の収穫は少なかった。

再び6時間150kmの旅。

この取材もけっこう大変なのですよ。

 

さて、お昼前に新港に戻ってみれば、

グラチャンが最高に盛り上がっていた。

 

川村光大郎、オリキンを生み出したこの岸釣りのイベントは、

W.B.S.プロトーナメントをも凌駕する白熱振りである。

24

いつか、スターが生まれることを期待したい。

 

そんなことを思っていると、早くも二日目のウェイインが始まった。

 

前述したが、二日目の競技時間は短い。

そして一般アングラーや他団体のボートも多い。

当然、レイクはタフ化する。

そんな中で釣ってくるのは初日以上に難しい。

 

さあ、どんな展開になるのか…

カタズを飲んで見守っていると、

やっぱりあんまり調子は良くない。

 

大誤算は初日5230gだった狩野・平本チームの1160g、

そして赤羽・保延チームの1350g、

高岡・早乙女チームの2780g、

小田島・森山チームの2500g……など、

一発大逆転が夢と消えてしまった。

 

しかし、意地を見せたチームもあった。

中でも小島貴・菅野弘幸チームは凄かった。

なんとっ! 7140g!

2日間通して最大の数字を叩き出してきたのである。

初日の0が悔やまれるが、

潜在能力を示す爆発振りである。

25

ボータールーキーの高橋亨・廣瀬祐太郎チームも

5840gとナイスウェイトを持ち込んできた。

きっと自信を付けたことだろう。

26

トータルな結果として、予想通り二日目の総釣果は落ちた。

リミットメイクが5チーム。

総釣果が74本。

総ウェイトが73280gで、平均2.9kg。

だが、0申告は2チームだけと減少した。

 

そんな中、二日間とも安定して釣って来たチームは、

したたかにお立ち台を確保した。

 

草深幸範・山本寧チームは

初日4160g、二日目4230gとまとめて6位に入賞した。

初日は霞ケ浦から北浦、

二日目は古渡の浚渫でゲームを作り、

両日とも4本ながら、

クォリティーな魚を揃えて来た。

中でも1810gは二日目のビッグフィッシュ賞を獲得した。

草深選手のダウンショットに来たものである。

27

二日目のビッグフィッシュ賞を獲得したタックルデータ

ROD:DAIWA ウェアウルフ

REEL:DAIWA PX68L

LURE:ドライブクローラー4.5 wo15 ブルーギル

LINE:サンライン シューター8lb

RIG:ダウンショット 5gバサーズスリムシンカー

 

柴崎智尋・斎藤徹チームも

初日4740g、二日目4870gとまとめて5位に入った。

ミスに泣きながらのこの数字は大したものである。

北利根、スノヤハラをメインに、

多様なワーミングを駆使して、二日間を乗り切った。

28

一方、初日は3520gとやや出遅れた長岡正孝・香取潤一チームだが、

二日目は6210gと堂々たるウェイトを持ち込んで4位に入賞した。

2日間とも北浦最上流、巴川まで走ったこのチーム、

オダが絡むようなリーズエリアで

ダウンショットをハングさせるというワザが冴えた。

29

この長岡・香取チームのスコアは9730g。

10kgには届かない。

やはり10kgの壁は厚いのか!?

 

そう思っているところに橋本・栗原チームがやってきた。

表情は明るくはない。

案の定、リミットは達成できなかった。

4本3490g、トータル9800gで、結果的に3位。

北浦のブレイクは炸裂しなかったのか?

初日はハイドロハンドが絶好調で入れ替えに次ぐ入れ替え。

場所を温存するほどだった。

二日目は4本まではすぐに揃ったが、

激戦区となったスポットで逆に竿抜けされて終わってしまった。

パートナーの栗原選手、婚約優勝とはならなかった。

しかしお立ち台だから満足すべきだろう。

30

橋本選手TackleData

Tackle1

ROD:DAIWA STEEZ ウェアウルフ

REEL:DAIWA SS-AIR

LURE:DAIWA ハイドロハンド

LINE:DAIWA フィネスブレイブ8lb

RIG:ダウンショットリグ

Tackle2

ROD:DAIWA STEEZ フランカー

REEL:DAIWA STEEZ 103SV

LURE:O.S.P. ドライブクロー3inch

LINE:DAIWA フィネスブレイブ14lb

RIG:ヘビーキャロライナリグ

 

栗原選手TackleData

Tackle1

ROD:DAIWA ブラックレーベル

REEL:DAIWA アルファスフィネスカスタム

LURE:DAIWA ハイドロハンド

LINE:SunLINE FCスナイパー10lb

RIG:ダウンショットリグ

 

 

さあ、大変なことになってきた。

残るは村川・倉田チームと

注目の蛯原・金井チームだけとなった。

 

そこへ村川チームがやってきた。

5本の魚を持っている。

初日は5110g。

果たして10kgの大台に乗るのか?

魚がスケールに載せられた。

デジタルが示した数字は

5240g!

31

ついに10kgに達した。

そして暫定1位に!

 

このチーム、初日は苦戦したようだ。

霞が浦本湖下流で11時まで2本。

そこでややディープにシフトしてまあまあなバスがヒット。

最後に西浦で入れ替えてなんとかスコアをまとめた。

二日目は初日の西浦フィッシュがヒントになって、

西浦でゲームを作り、1時27分、最後に入れ替えを果たして

準優勝を勝ち取った。

 

TackleData

村川選手TackelData

Tackle1

ROD:Engine スペルバウンドサーキットクラス608T3

REEL:ベイトリール

LURE:Engineフォールクロー3.5inch

LINE:DUEL T7 12lb

RIG:テキサスリグ

Tackle2

ROD:Engine スペルバウンドサーキットクラス608T2

REEL:ベイトリール

LURE:Engineフォールクローラー5inch

LINE:DUEL T7 10lb

RIG:ネコリグ

Tackle3

ROD:Engine スペルバウンドサーキットクラス608T2

REEL:ベイトリール

LURE:スティックベイト

LINE:DUEL T7 10lb

RIG:ノーシンカーリグ

 

倉田選手TackleData

Tackle1

ROD:ベイトロッド

REEL:ベイトリール

LURE:Berckley パワーホッグ3inch

LINE:フロロ10lb

RIG:ヘビーダウンショットリグ

Tackle2

ROD:ベイトロッド

REEL:ベイトリール

LURE:Engine フォールクロー

LINE:フロロ16lb

RIG:テキサスリグ

Tackle3

ROD:ベイトロッド

REEL:ベイトリール

LURE:Engine フォールクローラー

LINE:フロロ8lb

RIG:ネコリグ

 

そこにやってきたのが蛯原・金井チーム。

我々が目にした恋瀬川からどう展開したのか。

あの時は苦戦していたようだったが、果たしてどうなったのか?

静かにウェイインバックに魚を運ぶ蛯原選手。

1本…2本…そして3本…4本。

一呼吸おいて…5本!

リミットメイク!

しかもサイズも悪くない。

暫定トップの村川チームを超えるには3390g必要だ。

 

いい魚が5本なので3390gはイージーなようだが、

こればっかりは計ってみなければわからない。

 

そしてスケールに載せられた5本の魚。

2014第二戦最後のウェイインである。

 

3390gで優勝だ。

土浦新港全体が静まる。

蛯原・金井両選手も目を閉じてコールを待つ。

 

そしてデジタルが止まった。

そこに示された数字は

 

 

 

6320g!!

32

周囲を寄せ付けない凄みがその数字にあった。

 

トータル13290g!

 

圧倒的な数字である。

まさにぶっちぎり。

Wire to wireの完全勝利である。

 

「どうだっ!」 と右手を高く突き上げる蛯原選手。

いままでのウップンを綺麗に晴らす胸のすくような勝ち方だった。

スポーツの世界では、

強い人が強い勝ち方をすると、無条件に嬉しくなる。

そんな勝ち方だった。

33

それではお二人のインタビューを再現しよう。

 

まずは蛯原選手。

 

「第一戦を外してへこんでいたので、

今回何とかしてでも盛り返したいなと。

あきらめない魂を持って、練習しました。

 

プラではフロッグとゼロダン+ダブルモーションでいい釣りができて、

7kg近いウェイトが出ました。

自信ができたんですが、不安もあって……

 

ですが、せっかくいい釣りをしたんで自信を持っていこうと、

恋瀬川に行きました。

そこは水がすごい悪いんですよ。

GWが代掻きのマックスだと思うんですが、

その時期は魚は口を使いにくいけど、それからは、

いくら水が濁ってでも、いい方向に向かっているんです。

 

で、フタを開けたら、プラ通りにはいかず、

そこそこ釣れますがマックス4キロぐらい。

初日は結構イージーに釣れて、7時半には揃って、

10時近くまでやって、そのウェイトなんです。

 

それから入れ替えに走って、

今までにデカイのを釣った場所を思い出して回りました。

そこで来たのが2120g!

これはもしかして、あそこもいいだろう、そしてあそこも…

と頭に浮かんだところを回ったら、

恋瀬で釣った1300ぐらいのを残して、

全部入れ替えられた。

あの閃きが凄かったですね。

 

二日目はとりあえず、初日と同じことをやろうと恋瀬に行きました。

しかしアタリがない。

1時間やってもアタリがない。

 

本当に釣れなくてプレッシャーでつぶれそうだったんです。

雰囲気も悪かったですね。

 

でも、同じところを手を変え品を変え流して、

何とか揃いました。

そこから今日は、9時前に動きました。

 

本当にいろんなところを回りました。

例えば、ちょっとしたゴロタとか、

10mぐらいしかない葦とか。

本当に細かいところです。

 

そうして釣りをしていって、

優勝を確信した瞬間は正直言ってかなり興奮しました。

 

というのは、東浦にいたんですが、残り35分ぐらいですか。

1600gが釣れたんですよ。

それで、740と入れ替えて、1キロアップ。

 

そのあとラスト一投。

ピッチンスティックにアクティブさんのネイルシンカー1/16oz、

これをキャストしたら、1200gが来た。

 

もう一本700ぐらいのがいたので、入れ替えて、

キロ以下がいなくなったので、これは勝ったなと思いました。

 

心の底からシビレました。

 

勝因は自分の信じるルアーを投げ切ったこと。

自分の作ったダルブルモーション、デコイさんのゼロダン、

ほとんどそれで釣っていったかな。

キッカーバクでも釣りました。

入れ替えは、ピッチンスティック、そんな感じでした。

 

昨日の2120gの魚なんですが、バスが見えたんです。

EGピッチンスティックを入れたら、右から左に行ったバスが、

右へ戻ったんですよ。

けっこう濁っていたんですけどよく見えたんですよ。

だからアワせられた。

 

スエナガさんのトゥルービュースポーツのおかげです。

晴れている日には本当に見やすくて、確信もってアワせたら食ったんです。

 

実は、おととい、普段試合前には電話はかけてこない菊元さんが電話をくれました。

がんばれよ、と喝を入れていただきました。

せっかく電話をいただいて、無駄にはできないなと魂が入りました。

その気持ちに応えることができて、最高に嬉しいです」

 

パートナーの金井選手のお話も紹介しよう。

 

「私は初日テキサスを使ったのですが、あまりにも前で釣られたんで、

実演販売を見ているようでした。

感動しましたよ。

閃き、というのがすごいなと感じました。

まさに神降臨、という感じでした」

34

TackleData

蛯原選手TackleData

Tackle1

ROD:EVERGREEN ヘラクレスヘラクレス

REEL:ベイトリール

LURE:EVERGREEN ダブルモーション

LINE:EVERGREEN バスザイルマジックハードR 16lb

RIG:ゼロダンヘビー7g 3/0

Tackle2

ROD:EVERGREEN ヘラクレスエアリーフリップ

REEL:ベイトリール

LURE:EVERGREEN キッカーバグ

LINE:EVERGREEN バスザイルマジックハードR 16lb

RIG:ゼロダンヘビー7g 1/0

Tackle3

ROD:EVERGREEN ヘラクレスブルーマイスター

REEL:ベイトリール

LURE:EVERGREEN ピッチンスティック

LINE:EVERGREEN バスザイルマジックハードR 14lb

RIG:ネイルリグ アクティブMSシンカートーナメント1/16oz

35

金井選手TackleData

Tackle1

ROD:CWT 66CM

REEL:ベイトリール

LURE:GaryYAMAMOTO ヤマセンコー

LINE:EVERGREEN バスザイルマジックハードR 12lb

RIG:ノーシンカーリグ

Tackle2

ROD:GWT 67CMH

REEL:ベイトリール

LURE:EVERGREEN ダブルモーション

LINE:EVERGREEN バスザイルマジックハードR 16lb

RIG:ゼロダンヘビー 7g 3/0

 

こうして、蛯原・金井チームの13kg超えという華々しい結果で

第二戦は終了した。

 

いままで何度も最終日に煮え湯を飲んだ蛯原選手のこの強い勝ち方は、

ひょっとして「蛯原時代」到来? を予感させる結果だった。

 

2位に甘んじ続けた蛯原選手だったが、

腐らずに精進を重ねた結果がこの圧倒的勝利に結びついた。

 

勝ち方は派手だが、

その裏には地味な努力がある。

試合前に連日5時から5時まで、

キャストを繰り返した血のにじむような積み重ねが背があるのだ。

だからこそ派手な結果を生み出すのだ、

 

いままで、何度も2位に泣いた蛯原選手だが、

これで突き抜けたことだろう。

 

ズバリ、今年は蛯原選手が大きな壁となって

全選手の前に立ちはだかることだろう。

 

こうして、レベルの高い試合が繰り広げられるからこそ、

トーナメントは面白い。

 

その結果、全体がどんどんレベルアップするからである。

 

二人がチームとなって、

正々堂々とフェアーな戦いを繰り広げる。

それがW.B.S.。

舞台は世界に誇れるビッグレイク。

 

こんなトーナメントに関われる自分も、

すごく幸せだと思う。

 

選手の皆さんには感謝の二文字しかない。

 

私の人生を豊かに彩ってくれる選手たちを、

私は終生、愛するだろう。

 

いつも感動を与えてくれるからだ。

 

残りの試合もナイスゲームで私を酔わせてほしい。

36

いやー、それにしても疲れました。

 

もうトシですかね。

 

レポート・大和小平(やまと・しょうへい)

 

No Comments Yet.

Leave a comment

You must be Logged in to post a comment.