平本直仁プロ クラシックレポート


WBSカスミプロクラシック26
第15位 平本直仁プロ クラシックレポート

プレスアングラー:西嶋 武寛

WBS KASUMI PRO-CLASSIC 26、10月14日の霞ヶ浦は、17名の選手たちを阻むかのように、朝から冷たい雨が降り注いだ。

たった一つの目的のために集まった選手たちの熱気はこの程度の風雨で冷やされるようなものではなく、むしろ火に油を注ぐが如く、その熱量をより上昇させていった。

私が同船することになった平本直仁プロ。

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2017年のレギュラーシーズンをトータル2位で終了し、AOYにわずかに手が届かなかった悔しさをクラシックにぶつけるべく、他の16名の選手よりもその意気込みはより強かったに違いない。

朝の挨拶を済ませ、水上にボートを下ろす前から、フライトの前までの間、いろいろなお話をさせていただいた。

やはり私が一番気になったのは平本プロの沖の釣りである。

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おかっぱりでは体験できない釣りであり、何も知らない立場からは、沖にある岩やブレイクに魚がついているんだろう、ぐらいの認識だったのだが、それを間近で見られることは、私としても願ってもないことだった。

フライト前の会話の中でも、勝つための釣りを貫き通す意志の固さは節々どころか、至るところからオーラとして発せられていた。

そしてフライト前の固い握手から、最初のポイントとなる西ノ洲まで、平本プロは1㎜たりとも迷うことなくアクセルを踏み続けた。

到着した西ノ洲は、決して穏やかといえる環境状況にはなく、どちらかというと荒れ気味。

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そこで投げ始めたのはファットペッパー。そこからのローテーションはキャリラバ+ピックルワーム、そして110㎜サイズのミノー。

沖の釣りはバックシートから見ているだけだと、正直さっぱりわからない。それはすなわち、水没した障害物に等しく、見た目ではどこに何があるのかがわからないということ。

しかしルアーローテーションと平本プロの解説から、狙いとルアーの使い分けの根拠は実にシンプルかつ効果的であることが理解できた。

特にファットペッパーを投げ、巻き続ける平本プロには、沖の釣りで勝利をつかむための、狩猟民族といってもよいような執念を感じた。

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風が強い。シートポールを立てないのは足場の面積を広くとるためだが、風があり、波が高いこの状況下ではかなりの体幹バランスを要する。

それでもファットペッパーを巻き続けるため、ザ・ブルーハーツの真島昌利のように大股を開き、少しでも体制を低くすることで姿勢を安定させながら風雨波浪に耐え、Fenwickエイシスのプロトクランキングロッドを振り、ミッドダイバークランクの引き抵抗に耐え、ハンドルを回し続けた。

しかし、アタリがない。

水深や地形の状況からクランクベイト、フットボールやミノーをしつこく投げる平本プロの様子からは、そこにバスがいることはわかっている、という様子だった。

話を伺えば伺うほど、いつバイトがあっても不思議ではない、という緊張感を常に保っていたが、プラクティスで確認できていた勝利の方程式は、まさに音を立てて崩れ去ったようだった。

実際のところ、朝一にファットペッパーにあった魚信は、バスであったという確信にはいたらず、プラクティスの際の不安要素であった「沖の釣りでノンキーパーが釣れたこと」が示唆したことが、現実になりつつあることを予感させるには十分だったと言える。

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この後、北利根のブレイク、縦ストを撃ち、東岸の石積みをスピナーベイトで探り、土浦のハードボトムをヘビキャロで舐めまわし、木ジャカゴを6.5インチのネコリグで探るも反応なし。ヒントらしいものは見当たらずに一日が終了。

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プラクティスの状況とは完全に違うこと、そして自信がコンフィデンスを持つ釣りが通用しないと分かった今、平本プロが翌日の巻き返しのために選択するのはどのような釣りなのか、実に興味深かった。

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二日目の朝。平本プロは私に、昨日と同じ西ノ洲に行くことを告げた。

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朝の時点では予想されていたほど風は強くなく、充分釣りになる、という考えの下。

フライトでは数多くのボートが東へ向かう中、平本プロは西側へバウを向けた。すなわち、初日に釣ってきた選手達を凌駕できる魚は沖にいる、という信念である。

しかし、西ノ洲は前日同様に波立っていた。土浦新港では風裏で分からなかったが、西ノ洲は北風がキレイに通り抜けていた。

平本プロは、「このくらいの波は普通!」と明るく語ったが、実際心中は如何程に。ともあれ、ブレイクにはミッドダイバークランク、フラットには110mmミノーを投げ続けた。

昨日と違い、フラットでは魚にあたる。フラットの上はボラが大量に泳ぎ回っているらしい。

偶にミノーに魚がかかり、船上は緊張が走るが、泳ぎがバスではなく、そのままフックアウト。少なくともここに正解はない、と判断した平本プロの決断は、マンメイドの縦スト。小野川の真珠棚へと移動した。

ここから始まる真珠棚鉄杭の千本ノックの具材は、食わせと言うには脂っこすぎる。

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6.5インチワームのネコリグと、1/2ozラバージグ+ビッグダディ!杭を撃って、スイミング。しかし、ここでラバージグ+ビッグダディとは想像していなかった。

平本プロにとって、キーパーサイズは眼中にないのは言うまでもなく、ルアーボリュームを気にしないような強い魚だけを求めていたに違いない。

杭の数は果てしなく、それでも平本プロのワンキャスト毎の精度や着水、操作に対する丁寧さには目を見張るものがあった。

それまでの沖の釣りでは目標物が水中の地形であったため、バックシートからはそのキャストとルアーオペレーションが丁寧なのか雑なのかすら分かりづらかった。

だが、目標物が明らかになったとき、着水のポイント、着底してステイ、そしてスイミングと、動作の一つ一つに目的意識を持つことは、バスフィッシングにおいては基本であり、当たり前のことかもしれないが、私にとっては改めての学びのポイントだった。

基本に忠実、というのは結果に最も近道なのだろう。
丁寧なキャストを繰り返していると、鉄杭がこのストレッチで一番ややこしく入っているポイントで、ネコリグに抑え込むようなバイト!
ゴールデンウイング伝統のティップの高感度と、強靭なバットのトルクがとらえ、いなし、キャッチできたバスはまさに値千金。「バスの釣り方を忘れてたよ」という言葉は半分くらいは本音だったのだろう。

 

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しかし驚いたのは、平本プロの「1kgもないなー」という呟き。

私からみると1,200g前後はありそうに見えるバスが、平本プロ評では小さい、という。実際ウェイインでは1,145gあったことからも、目算計測はアテにならない、ということが言えるが、この言葉は逆に、沖の釣りの破壊力を知る者からすれば物足りないことこの上ない、という想いの表れでもある。

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既に霞ヶ浦のプロトーナメントは、1日7kgを釣らないと勝てない時代に突入していることを暗に示唆する、ちょっとした会話だった。

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平本プロはバスのキャッチからしばらくの間、脱力感というか虚無感というか、脊椎の所々がまさに骨抜きにされたような気分に襲われたらしい。

それは別の言い方をすると、バスのキャッチになかなか至れなかったたことへの恐怖から解放されたことに対する安堵感だったに違いない。

しばらくの間、バスをキャッチしたことへの余韻を味わい、次のキャストに向けてのラインの結び変えを行ったが、余り糸を切ろうとして誤ってメインラインを切るという、虚脱感を引きずったミス!同船したのが女性ならば、確実に母性本能をくすぐられたに違いない。

 

結局、2日間で平本プロがキャッチしたバスはこの1本だけだった。

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大粒の雨、北風と波浪の中、のたうち回った、というよりは信じた釣りを押し通した2日間。

私はバックシートでシートポールのお世話になり、かなり楽チンさせていただいた。だが、フロントデッキで波と戦いながらキャストを繰り返し、移動の都度エレキのマウントの上げ下ろしに苦労し(事実、マウントが若干変形していて、マイナスドライバーで可動域を広げながらの上げ下ろしだった)、ファットペッパーの引き抵抗に耐え続けたこの2日間。

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ご本人からしても、想定の範囲内ながらも予定外だっただろうし、何よりも信じた沖の釣りが示した、ハイリスクの顕在化。

数年前に感じた自身の釣りの限界に対して、活路を見出すために取り組んだという沖の釣りは、年間2位というポジションと、今回のクラシックのリザルトを以って、2018年はリスクすらも吹き飛ばすような、更なる進化を遂げると私は信じている。

今回のWBS KASUMI PRO-CLASSIC 26、雨、風、冷え込みと、天候に恵まれなかったのは実に残念だったが、WBSの吉田幸二さんをはじめとするスタッフの皆様、感動する試合を繰り広げた選手の皆様、そして2日間プレスとして同船し、お世話になった平本プロに感謝申し上げ、当報告を締めさせていただく。

ありがとうございました。

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