フッ切れたか、橋本卓哉!!
W.B.S.クラシックという大試合で
堂々の逃げ切り勝利!!
2006 W.B.S. PRO CLASSIC
NOV. 11−12 QUICK REPORT
いうまでもなくW.B.S. PRO CLASSICは
今年のランキングベスト20とスーパー3デイズベスト3、
そしてディフェンディングチャンピオンのみに戦う権利が認められている
狭き門。
つまり、誰が考えても納得できる選抜基準により、
出場が決められる試合だ。
スポーツにはこの公明正大さが重要だ。
今年は22名の選手がその権利を行使した。
舞台は相手にとって不足ない霞ヶ浦水系。
おまけに与えられた条件が初日の豪雨、2日目の強風。
これ以上ない難解な舞台が設置された。
まさにビッグタイトルを賭けて戦うにふさわしい設定である。
そんな中で行われたクラシック。
このところ、数々のドラマが生まれているクラシックではあるが、
今年も話題に溢れた素晴らしい試合を見せてくれた。
主役はもちろん勝った橋本卓哉だが、
参加した選手の数だけ、そして関ったスタッフや関係者の数だけ、
様々なドラマがあった。
あのトラウマを自ら振り切った橋本卓哉
「冷静に振り返ってみれば、
最終戦に勝ってから、いい流れが来ているように
感じていました……」
11月12日、表彰式を終え、
土浦新港に影を落とす夕日を背に、
後片付けをしながら橋本卓哉は静かに語った。
「最終戦では、渋い状況の中でなんとか搾り出して勝てました。
そして今回のクラシックでは確かにトップで2日目を迎えたので緊張はしましたが、
なぜか今日は落ち着いてゲームを進めることが出来ました」
語りつくされてはいるが、
橋本卓哉といえば2005年のスーパースリーデイズで
ブッちぎりのトップで迎えた最終日、
周囲を「アッ」と驚かせるノーフィッシュ帰着で
大魚を逃した男。
それゆえ、トップで最終日を迎える怖さは知り尽くしている。
しかし、今回は「落ち着いてゲームを進められた」という。
その理由はやはり最終戦に隠れている。
振り返ってみよう。
全体的にウェイトが伸びない渋い試合だった最終戦。
それだけに橋本は勝つことなど念頭になく、丹念に拾い釣りに専念した。
前夜もスコンと眠れたという。
そして勝った。
あれほど大変だった勝利があっけなく転がり込んできたのである。
その時、橋本卓哉はフッ切れた。
勝利の秘密を探り当てたのである。
つまり、タフな状況下では
いかに魚を拾ってくるか…
そして着実にキーパーを重ねることが勝利につながるという、
古くて新しい真理に到達したのである。
だから、このクラシックで初日唯一のリミットメイカーにしてトップ通過でも、
昨年のスーパースリーデイズの轍は踏まなかった。
「冷静に対処すればなんとかなる」
そういった確信はあったという。
「11時までノーフィッシュでした」
普通の人間だったら、そこで終わり。
クラシックというビッグタイトルを目の前にして、
11時までノーフッィシュ。
これは並みのテンパリ状況ではない。
だが、2006年の最終戦に勝ったことで
スーパースリーデイズの呪縛から逃れた橋本卓哉は
そんなプレッシャーを跳ね返して、
3本の魚をモノにして、
危なげなく逃げ切った。
見事というほかない。
橋本卓哉の試合前の胸算用は
初日、本湖をラン&ガンして4・。
2日目にプラで好感触を得ていた鰐川で3.5kgというものだった。
かなり自信もあったそうだ。
だが、初日の本湖4kgがいきなり誤算。
恋瀬川に直行するも音無し。
さればと本湖を巡れば、
いずれもノーバイト。
「マズイ。これではアブれてしまう」
ノーフィシュの恐怖におののいた橋本は
急遽プランを変更。
鰐川に直行して前倒し作戦を実行した。
2日目なんかどうでもいい、とにかく初日を乗り切ろう。
そんな決心だった。
それが見事にハマって5本3,550g。
プラでは沈み物に当たったが、
この日は目に見えるストラクチャーで好感触。
O.S.Pジグ・ゼロワン7g+ロッククロー、
縦ストはCCラウンドをフォールさせて、
入れ替えも果たした。
しかし、2日目のアテはなくなった。
おまけにフライトは一番。どこでも行ける。
しかし「行くところが…ない」。
天気予報の「昼前から強風」も大人になった橋本には気になるところ。
初日良かった鰐川にも行きたかったが、
短い試合時間、強風による帰着遅れなどを考慮し、
迷った挙句、古渡の水路にバウを向けた。
「僕が打った唯一のバクチです」
だが、ビッグボーナスは来なかった。
そして付近のさまざまなスポットをラン&ガン。
それもダメ。
最終的にキープしていた西浦で水温が上がれば期待できる場所で、
3本、拾った。
ここもO.S.Pジグ・セゼロワンが炸裂した。
ボトムでしばらく待つという辛抱が、3本の魚を橋本に与えた。
3本2,120gは2日目の二番目のウェイトである。
傍目には楽な逃げ切りと写るが、本人は
「うーん、バクバクでしたね。
クラシックは勝たなければ意味はない。
だからみんな、大勝負してくるだろう。
誰かがハマったら、勝てない。そう考えていました」
しかし、ハマった者はいなかった。
「最終日、中止になることを期待した?」
と意地悪な質問を浴びせたら
「正直言って、中止で勝てたらラッキーだと思いました。
本音です。だって、勝てるときに勝っとかないと…
いつか勝てる保証はないですからね」
なるほど、いわれてみればその通りだ。
こうして身長174・、体重60kgの橋本卓哉は
第15代のクラシックチャンピオンとなった。
体脂肪率12%も試合後は10%に落ちるという。
メタボリックシンドロームも無縁な
ニューヒーローが誕生した。
橋本選手タックルデータ
TACKLE1
ROD:Daiwa STEEZ ハリアー
REEL:Daiwa TD-Z 103ML
LURE:O.S.P.JIG
LINE:Daiwa TD-ブレイブ 14lb
TACKLE2
ROD:Daiwa バトラー フランカー
REEL:Daiwa TD-Z ML
LURE:CCラウンド5g
LINE:Daiwa TD-アデス 12lb
TACKLE3
ROD:Daiwa バトラー ハリヤー21
REEL: TD-Z 103ML
LURE:ジヤッカル カバークロー4in
LINE: TD-アデス 12lb
RIG:ノーシンカー
今季好調選手が名を連ねた二位、三位
橋本卓哉の優勝を脅かした一番手は長岡正孝選手だった。
初日、2日目とも北浦に直行。
山田、蔵川などの各ワンド。
武井のブレイクなどを、
今季絶好調だった猫ひろし作戦=
ドーバークローラーのネコリグで攻略。
二日間とも安定したスコアを持ち込み。
みごと準優勝に輝いた。
ジグヘッドワッキーを一年間やり通そう…
その信念が見事に花開いたといえよう。
「何回か惜しい魚をバラことに悔いは残りますが、
今年一年、充実していました。
クラシック準優勝でいい締めくくりになりました」
声は大きくないが、清清しい表情だった。
長岡選手タックルデータ
TACKLE1
ROD:メガバス・デストロイヤーF1 61XS
REEL:Daiwa セルテートフィネスカスタム2506
LURE:ドーバークローラー
LINE:フロロ8lb
RIG:ジグヘッドワッキー
TACKLE2
ROD:メガバス・デストロイヤーF1 60X
REEL:Daiwa リベルトピクシー
LURE:ファットドーバークローラー
LINE:フロロ 8lb
RIG:ジグヘッドワッキー
TACKLE3
ROD:メガバス・デストロイヤー F5 66
REEL:Daiwa TD-Z 103
LURE:ビースト
LINE:フロロ 14lb
RIG:テキサスリグ
三位には今年のA.O.Y. 麻生洋樹選手が入った。
初日は1本1,110gと大きく出遅れたものの、
2日目はビッグウェイトを狙って恋瀬川に直行。
クリスタルSのホワイトチャートをJR鉄橋下で投げまくり、
見事1,720gというビッグフッィシュを釣り上げた。
全般的にウェイトが伸びないタフの試合では、
このビッグフィッシュは麻生選手を一挙にランクアップさせた。
結果的に2日目のトップウェイトで、
今年の最終戦を三位で終えた。
初勝利、A.O.Y.獲得と、
今年は麻生選手にとって素晴らしい年だった。
今後の飛躍を期待したい。
麻生選手タックルデータ
TACKLE1
ROD:Nories RoadRunner Voice 630L
REEL:SHIMANO 1000MG
LURE:クリスタルS ホワイトチャート
LINE:12lb
TACKLE2
ROD:Nories RoadRunner Voice 650MH
REEL:SHIMANO 1000MG
LURE:エコギア バグアンツ 4インチ
LINE:フロロ14lb
RIG:テキサスリグ1/4oz
なお、初日のビッグフィッシュを獲得したのは
駒井寛選手の1,560g。
スタート直後に境川の河口のブッシュで幸先良く釣ったもの。
フライトの遅い選手はまだ新港内で待機中の出来事だった。
ほんと、クラシックはいろんなことがある。
駒井選手タックルデータ
TACKLE1
ROD:G−LOOMIS 844
REEL:ダイワ ジリオン
LURE:ジャッカル カバークロー4インチ
LINE:バークレイ17lb
RIG:ノーシンカー
こうして、今年のクラシックも無事終了した。
徐々に水温が低下する厳しい時期。
雨が頬を打ち、風が波を狂わせた過酷な試合だったが、
全選手、よくぞ敢闘精神を発揮して戦い抜いたと思う。
みんなが目標にするクラシックだから、
参加する以上、ベストを尽くして戦う責任があるが、
いままで、私が見る限り、
その責任を全うしていない選手は誰一人いない。
今年のスケジュールをすべて終えた今。
W.B.S. この素晴らしきトーナメント組織に
幸多かれと祈らざるを得ない。
付録
全選手ひと言コメント(順不同)
小林研一選手
「来年も出られたら出たいんだけど…どうかなぁ」
布川昭男選手
「連続出場できるよう頑張りますよ」
金光忠実選手
「いや〜、最終日はビッグ狙いにいったのになあ〜」
中嶋美直選手
「いや〜、水温が下がっちゃって…
魚が口を使わなくなってしまいました」
浅井由孝選手
「2日目は怪獣クラスしか狙ってなかったから
1kg以下は逃がそうと思っていました」
蛯原英夫選手
「プラではいいパターンを見つけていたんですけどねぇ…」
大藪厳太郎選手
「季節の変わり目に翻弄された…といっておきましょう」
平本直仁選手
「たくさん掛けたんですが、たくさんバラしました。
それにしてもサイズが悪くなっていた」
田中健選手
「(2日目は)なんたってロッドが一回も立ちませんでしたよ」
川口信明選手
「基本的に凪で晴れが条件だったので、ダメですね」
木村翔太選手
「いや〜揃えたかったんですけどねえ…」
海藤真也選手
「川には入らん。本湖で勝負と頑張ったんですが…」
小田島悟選手
「数は出ないが、サイズが期待できるエリアを回ったんですが…」
峯村光浩選手
「ノーネイムフラット、釣れますよこのクランク」
香取潤一選手
「プラでは1バイトですからね。それよりはいいかと…」
赤羽修弥選手
「川がメインだったんで、この時期の雨にはやられましたね」
宮澤選手
「全てノンキーになってしまった…
スタッフのみなさん2日目は申し訳ありませんでした」
大内 学選手
「ご迷惑をお掛けしました。
スタッフのみなさんに感謝します」
レポート 大和小平(やまと しょうへい)
W.B.S. PRO CLASSIC15 2006.11.11-12最終結果
Day1 | Day2 | Total | |||||||||||
Weight | F | / | A | Weight | F | / | A | Weight | F | / | A | ||
1 | 橋本 卓哉 | 3,550 | 5 | / | 5 | 2120 | 3 | / | 3 | 5670 | 8 | / | 8 |
2 | 長岡 正孝 | 2,840 | 4 | / | 4 | 1960 | 4 | / | 4 | 4800 | 8 | / | 8 |
3 | 麻生 洋樹 | 1,110 | 1 | / | 1 | 2530 | 2 | / | 2 | 3640 | 3 | / | 3 |
4 | 大藪厳太郎 | 1,440 | 2 | / | 2 | 1990 | 2 | / | 2 | 3430 | 4 | / | 4 |
Tie | 赤羽 修弥 | 2,750 | 4 | / | 4 | 680 | 1 | / | 1 | 3430 | 5 | / | 5 |
6 | 小田島 悟 | 1,590 | 2 | / | 2 | 1680 | 2 | / | 2 | 3270 | 4 | / | 4 |
7 | 香取 潤一 | 1,810 | 3 | / | 3 | 930 | 1 | / | 1 | 2740 | 4 | / | 4 |
8 | 平本 直仁 | 1,320 | 2 | / | 2 | 900 | 2 | / | 2 | 2220 | 4 | / | 4 |
9 | 駒井 寛 | 2,040 | 2 | / | 2 | 0 | 0 | / | 0 | 2040 | 2 | / | 2 |
10 | 峯村 光浩 | 940 | 1 | / | 1 | 980 | 1 | / | 1 | 1920 | 2 | / | 2 |
11 | 金光 忠実 | 1,690 | 2 | / | 2 | 0 | 0 | / | 0 | 1690 | 2 | / | 2 |
12 | 川口 信明 | 850 | 1 | / | 1 | 730 | 1 | / | 1 | 1580 | 2 | / | 2 |
13 | 中島 美直 | 990 | 1 | / | 1 | 560 | 1 | / | 1 | 1550 | 2 | / | 2 |
Tie | 蛯原 英夫 | 1,550 | 2 | / | 2 | 0 | 0 | / | 0 | 1550 | 2 | / | 2 |
15 | 木村 翔太 | 0 | 0 | / | 0 | 1120 | 1 | / | 1 | 1120 | 1 | / | 1 |
16 | 浅井 由孝 | 1,010 | 1 | / | 1 | 0 | 0 | / | 0 | 1010 | 1 | / | 1 |
17 | 田中 健 | 590 | 1 | / | 1 | 0 | 0 | / | 0 | 590 | 1 | / | 1 |
18 | 宮澤 孝博 | 0 | 0 | / | 0 | - | - | / | - | 0 | 0 | / | 0 |
Tie | 布川 昭男 | 0 | 0 | / | 0 | 0 | 0 | / | 0 | 0 | 0 | / | 0 |
Tie | 大内 学 | 0 | 0 | / | 0 | - | - | / | - | 0 | 0 | / | 0 |
Tie | 小林 研一 | 0 | 0 | / | 0 | 0 | 0 | / | 0 | 0 | 0 | / | 0 |
Tie | 海藤 真也 | 0 | 0 | / | 0 | 0 | 0 | / | 0 | 0 | 0 | / | 0 |
26070 | 34 | 34 | 16180 | 21 | 21 | 42250 | 55 | 55 | |||||
BigFish | |||||||||||||
Day1 | 駒井 寛 | 1560 | |||||||||||
Day2 | 麻生 洋樹 | 1720 |