World BassSosiety Pro-Team Tournament 2004 2nd

This is 出藍の誉れ!
長岡正孝、海藤真也チーム、悲願の初優勝
川口信明に続いて山田塾生が連覇の偉業達成!


彼らの優勝が決まった瞬間、
山田貴之は自分のことのようにそれを喜び、
チームメイトの山田塾生たちは心の底から歓声を上げた。
桂裕貴、草深幸範、川口信明・・・
いずれも勝っておかしくない山田塾メンバーが、
自分のことのように長岡選手の勝利に感動した。
これぞ出藍の誉れといわずしてなんといおうか。
そしてその長岡選手の瞳にはキラリと光るものが・・・。

怪我による長期間のブランク、最大の理解者であった父の死・・・
表彰台に立つ長岡選手の胸に万感が去来したのも、想像に難くない。
今回も相変わらず超が付くほどのタフな試合であったが、
長岡選手の潤んだ瞳が爽やかな幕切れを演じてくれた
ナイゲームであった。

満開の桜が咲き乱れる中で行われた2004年W.B.S.シリーズ第2戦は、
3月28日、春の穏やかな風が心地よい気候のもと、
34チームが参加して行われた。
日増しに暖かさを増してきた試合前の天候ゆえ、
久々にダイナミックな釣果が期待されたが、
何といっても日本一難解な今の霞ヶ浦、そうは問屋が卸さない。

当日こそ気温は20℃近く上昇したものの、
数日前の冬のぶり返しによる水温低下からの復帰は果たせず、
試合開始時の水温はいまだ10℃以下。
花見気分に浮かれる陸の感覚からは想像できない過酷な状況が
今回も選手たちを襲ったのである。
おまけに、そんな悪天候に襲われたプラクティス期間ゆえ、
本湖のあらゆるスポットは壊滅状態。
景気の良い話は期待するほうが無理というもの。

つまり、ほとんどの選手が「魚の見えないまま」、
試合に突入したという状況だった。
唯一プラス要素を挙げれば、
当日の気温が水温を上げてくれることぐらい。
試合時間内にグーンと上がってくれれば、
コンディションは激変してくれるだろうという、
いってみれば儚い望みにすがるしかない様相だった。

しかし、そんな一縷の望みをガッチリ掴み、
優勝の栄誉を勝ちとったチームがあった。
長岡正孝・海藤真也チームである。

12時過ぎに13℃まで上がった水温、
その一瞬の好機を逃がさす、
クオリティーな魚を2本獲ったのである。
それでは優勝チームの一日を振り返ってみよう。

スタートは5番。
「フライトが早いと、他の選手を気にすることなく、
好きな場所を選べる」と一番に入った場所は古渡・小野川。
二人で相談して「ツブシの効く場所は残しておいて、
まずは朝一に釣らなければならないエリアをチョイスした」とのこと。
要するに、魚が回ってくるであろう岩盤エリアはキープしておいて、
朝一番に有望なスポットを攻めたということだろう。

3inパワーホグのダウンショット、
ネコリグ掛けでまずは一尾目のキーパーを狙うが・・・釣れない。
岸ギリギリのスポットで真剣に釣りをしていたが、
古渡だけにフト岸を見ればオカッパリにヒット、
あれよあれよという間に釣られてしまう。
それも1kgほどのナイスな魚が。

しかしこのチーム、そんな状況に口を半開きにして
ヨダレを垂らしているだけの凡チームではなかった。
あるヒラメキとヒントを掴んだのである。
「オカッパリに釣れて僕らに釣れないのは、
何か理由があるに違いない」
冷静に判断した彼らがとった行動は、
スーパーサイレントアプローチ。

アメリカでは「ニンジャ・アプローチ」とも言われているが、
つまりなるべく気配を消して魚に対峙するというメソッドである。
奥多摩の怪人・横島勝氏と親交がある長岡選手ならではの発想だが、
魚探、エレキをOFFにして、正座するほど姿勢を低く、
しかも極力遠方から釣りをするというものである。
まっ、腰を抜かすほどの新メソッドではないが、
そこまでして最初のキーパーを欲しがった彼らには神も微笑んだ。

朝一番でバラシた取水塔の鉄杭に入りなおして、
見事に一本ゲットしたのである。
これで調子に乗るかと、
キャストにも思わず気持ちが入ったが、後が続かない。
結局、午前中のほとんどをそこで費やしたが、
二人は躊躇なく場所移動に踏み切った。
目指したスポットは出島、一文字。

「釣れない時は原点に戻れ」との格言のもと、
試合直前から再び脚光を浴びていた往年の定番スポットである。
着いてみればすでに数艇が目に入ったが、
長岡選手の視野を掠めたのが
師匠・山田貴之・西村嘉高チームであった。
目を細めてなおも仔細に釣りを見ていると、
執拗にゴロタの隙間にルアーを投げている。
どうやら最初の一巻きに神経を集中させ、
そこでノーバイトなら即座にピックアップしているようだ。
長岡選手にとって、そこまで見せてもらえば十分だった。

TDシャイナーG、デュエルSH60SP、
メガバス・ライブXマーゲイをローテーションさせ、
ゴロタの隙間50cmをなめるように一つひとつトレースしていった。
この時点でライブウェルにいる魚はわずか一本、
いうまでもなく二人の脳裏には、
「優勝」の二文字はまったく存在しなかった。
そんな邪念のない姿勢が2本のナイスサイズをもたらした。

時刻はすでに12時を回っていた。そして水温は13℃。
一斉にさしてきた魚がにわかに活性を高め、
岩盤をタイトに掠めるルアーに飛びついてきたのである。
こうしていずれもキロアップの3本の魚を確保した二人は、
「この時期の霞ヶ浦では上出来!」と、
それでも優勝などはまったく意識せずに
帰着へのイグニッションを回した。

スタートがはやければ検量も早い。
長岡・海藤チームも早い段階でウェイインを済ませたが、
ウェイトは3,660g。ガッチリ握手を交わした二人だったが、
この時点でも優勝への色気はほとんどなかった。
やがてウェイインが半分終了した。
二人・・・「ひょっとして? でもお立ちはいけたかな?」
そして3/4が終了した。
二人・・・「まさか? 優勝?」
ウェイインも残り1チーム。
二人・・・「ヤバイっすよ、これ。ホントにやっちゃったのかも???」

ウェイインは終わった。
チームメイトの握手攻めに合う長岡選手。
実は初優勝である。苦節10年。
いろいろあったが、この日は同選手にとって、
忘れがたい一日になることだろう。

最後に長岡選手は遠くを見つめながら呟いた。
「今日まで我慢強く応援してくれたスポンサーのメガバスさん、
カミサンと二人の子供たち、天国のオヤジ、
そして口は悪いが気持ちは暖かい山田さんはじめチームメイトのみんな・・・
こうした人たちに囲まれて、僕はシアワセ者ですよ」
海藤選手と協議の上、緻密なゲームプランを立て、
手強い霞ヶ浦をひたすら真剣に釣り切った姿勢が、
みごとに実を結んだ勝利といえよう。
初優勝オメデトウ! 長岡正孝・海藤真也チーム!



さて一生懸命戦ったのは準優勝以下のチームも同じこと。
彼らのレポートも忘れてはならないだろう。
準優勝は中島光博・吉田和之チーム。
プラではまったく釣れなかったので、
小さくてもいいからとにかく魚を釣ろうと川へ向かったが釣れない。
そこで本湖と心中を決めて、
牛堀のテトラをステイシー60で攻めたところ1本、
続いて牛渡のドック周りをスピンムーヴシャッドで攻めたらまた1本と、
2本ながら2,160gをウェイインして、
「まったく予想していなかった」準優勝を勝ち取った。



3位は粟嶋英之・布川昭男チーム。



2回のプラで1バイトと、素晴らしい状態で試合に臨んだが、
魚ッ気の一番多かった西浦をメインにゲーム展開。
帰着2時間前には石田に戻り、
岩盤を最初はセオリーどおり巻き物で攻めつづけたが、
「ワームがダメという法則はない」
と3inパワーホグのダウンショットにチェンジしたら、
帰着15分前に1,960gが食ってきた。
結果的にビッグフィッシュ賞も同時獲得した一本だが、
ランディングの布川選手も最近になく緊張したという。



4位は小野光一・澤部弘チーム。
東浦の奥と柏崎でそれぞれ1本ずつ、
エスケープツインのテキサスリグで拾っていったという。
前日のプラでは15分で1本釣れて、
「万全の態勢で臨んだ」小野選手だったが、
フタを開けてみたらプラの魚は影もカタチもなかったという。



5位は山田貴之・西村嘉高チーム。
プラでは麻生〜太郎岩までの杭を一本ずつすべて打ったがノーバイト。
そこで当日は、日が射し水温の上がるタイミングを見据えて出島の一文字へ。
「釣れない時ほど大場所で」の格言は山田語録のひとつである。
キャストアキュラシーに優れたSH60SPなどのサスペンドミノーを
岩にタイトにぶつけて泳がせる「DIPPING」
という山田流メソッドで2本の魚をゲット。
「西村選手のアドバイスがなかったらこの入賞はなかった」
と山田選手は感慨深げだった。



6位は高野和久・橋本悟チーム。
ノンボーターお立ち台率が非常に高い
橋本選手のリラックスアドバイスで
我に帰った初ボーターの高野選手。
パワーホグのテキサスリグで
3ケ所のエリアをサーキットして2本で1,600gウェイイン。
初ボーターにしていきなり入賞してしまった。



以上が入賞者のパターンのあらましである。
他の選手の動向としては、
鳥澤徹・藤野淳一チームは西ノ州の岩盤を
TDシャイナーGで攻め1,260gを獲ったが後が続かず、
「3月の男」市川好一・丹竜治チームはノーフィッシュ。
おまけに丹選手、まさかの落水。
ちなみに落水者はもう一名いたとのウワサである。

狩野敦・出村輝彦チームは
マイホームのスノヤハラがお留守ということで、桜川での一本のみ。
折本隆由・末永宏行チームも小野川で撃沈。
オカッパリのファミリーに、
スポットを教えたらオカーサンにキロフィッシュが・・・。
よくあることだが、折本選手、さぞや複雑な心境だったことだろう。
そしてビッグネームの数々が討ち死にしたことも印象深い。

そろそろマトメに入ろう。
16チームがゼロ申告、リミットメイカーなしという結果は、
今回も霞ヶ浦におけるバスの個体数の減少を思い知らされたが、
それでも試合は試合であり、
この状況をなんとか克服して上位に入った選手たちは、
賞賛に値しよう。
現に、アメリカのトーナメントでは
もっと悲惨な貧果に終わったケースも少なくない。
しかし、それでもなお、
ビッグウェイトが炸裂した往年の霞ヶ浦の魅力は捨てがたく、
そんな昔日の姿を取り戻すためのあらゆる手段を
我々は選んでいられないだろう。
んズガーン。

トーナメント・レポート(大和小平=やまとしょうへい)