World BassSosiety Pro-Team Tournament 2004 1st

マンダム&ウメちゃん、略してマンウメ・コンビ!?
川口信明・林俊雄チーム
氷河期の霞に勝利の雄叫びっ!


実に壮絶な試合であった。
いままで数々の修羅場を潜り抜けてきた歴戦のつわものが
揃って討ち死にするという、
過去に例を見ないほどのウルトラタフトーナメント。
参加39チーム中、ノーフィッシュが27チーム。
実に2/3がアブれるという異常事態を呈していた。

ただでさえ激渋の冬の霞ヶ浦水系に、
名物の北西風が強き荒れてはたまらない。
まさに氷河期が到来したかと思わせるサブーい湖上で、
各選手は悶絶昇天した。
ウェイイン会場に続々と運ばれる屍の山は、
未曾有の激戦を髣髴とさせ、築山選手も反射的に合掌するほどであった。
しかし、その本人も討ち死にしたひとりであった。

そんな中、ひとりほくそ笑んだのが川口信明・林俊雄チーム。
荒れる状況を考慮に入れ、
あらかじめ組み立てたクレバーな作戦が功を奏し、
3本のクォリティーフィッシュを搾り出し、
見事初戦の勝利者となった。

貧果の試合では無類の強さを発揮するジョージ・コクランのように、
したたかなプランで血で血を洗う消耗戦にしぶとく生き残ったのである。

それでは大会の模様を、
今回は趣向を変えてウェイインステージからの実況で振り返ってみよう。

最初にやってきたのが宮本英彦・蜂谷制チーム。
オオッ! 宮本プロといえば2003年シリーズの第3戦で、
最初にウェイインしてそのまま優勝という
Pole to Winを成し遂げた選手ではないか。
今回もそのパターン再現か!
と周囲をどよめかせたが、なんと手ぶらでのご帰還。
Pole to loseになってしまった。
3番スタートを利して古渡の水路に直行したが、
2番スタートの野田昌直・篠田勉チームに先を越され 「釣られちゃいましたよ」と泣きの涙。

次はオオッ! 狩野敦・末永宏行チーム。
これは景気のいい話を聞けるかとMCも一歩膝を乗り出したが、
なんと、ここもノーフッィシュ。
心なしか狩野プロのトークも冴えなかった。
「今日はこのぐらいにしといたろか」との捨て台詞も元気がない。
パートナーの末永選手は、ケツをさすりながら
「噂には聞いてましたが狩野プロの鬼走りを満喫しました」
とメガネのプロモーションも忘れる始末。

そこへ飄々とやってきたのが浅井由孝・下妻勇一チーム。
うーん、ここもノーフィッシュ?
との失礼な予想を覆す3本の魚をウェイイン。
堂々の1820gで「暫定トップゥ〜!」
との叫び声が土浦新港にこだました。

だが次は続かない。
早水彰・東間洋介のアウトロー・ムーミンチームも玉砕。
挙句の果ては昨年度のA.O.Y.と
クラシックをブチ抜いた峯村光浩・平泉康成チームも
まさかのノーフィッシュ。
峯村プロは今回、スピニングをも駆使し、
なんとか型を見ようと奮闘したが、潔く散華した。

麻生洋樹・小田島悟チームも手ぶらでのご帰還。
麻生選手は「どーなっているのか?」と納得できない様子。
小田島選手は「次はリベンジ」といつものセリフを漏らしていた。

さらに大藪厳太郎・稲葉隆憲の実力コンビもまさかのノーフィッシュ。
渋い時期にはそれなりのゲームプランで食い下がる大藪プロをもってしても、
この日の霞ヶ浦は難攻不落だったようだ。

そして鳥澤徹・山田忠昭チームも笑顔でのゼロ申告。
「去年も初戦はデコったのでこんなもんかなあ」
という鳥澤プロだったが、その顔は怒りに震えていたようだった。

桂裕貴・武恵一チームも沈没。
ボート上での桂プロのパフォーマンスもスベリまくっていた。

うーん、こりゃーノーフィッシュの嵐、ウェイインも早く終わるなあ、
と思っていたところへやってきたのが野田昌直・篠田勉チーム。
宮本さんが「釣られてしまった」というように、
このチームは魚を持っているハズ。
果たしてライブウェルから出してきた魚はみごと、
1000gジャストのナイスなプロポーション。
久々に魚の姿を拝めて、ギャラリー一同安堵の溜息。

そこへやってきたのが安藤毅・小野光一チーム。
ズガーンとライブウェルから抜き出したのは、
2340gのスーパービッグフィッシュ。
一本ながら一躍トップに躍り出てしまった。
風裏の古渡でエスケープツインを水平フォールさせ、
ラインでアタリをとり、空振り覚悟でアワせたらこのサイズ。
「あの事件」以来スケールにこだわっている小野選手も
「スケール不要のサイズ」と胸を張る始末。
「10位以内なら上出来」と控えめな目標を立てていた安藤プロだったが、
結果的にこの一本でビッグフィッシュ賞と
準優勝のダブルタイトルを獲得した。
フックのゲーブにシンカーをかませ、
ワームを極力水平に落とすという繊細な釣り方が、
激渋のコンディション下で望外な結果をもたらしたといえよう。
うーん、安藤プロの好調ぶりはまだ続いているようだ。



次にウェイインしたのは折本隆由・橋本悟チーム。
オッ、ここも魚を持っている。
しかも二本で1840gとこの日にしてはまずまずのウェイト。
小野川の真珠棚でロッククローの1/8テキサスを駆使して釣り上げたそうだ。
晴れると小野川の魚は杭にタイトに付く、
という分析がみごとにハマり「今日の状況では上出来です」
という6位に入賞した。



さらに粟嶋英之・高野和久チームも1本ながら2240gと
立派な魚を持ち込んできた。
堂々とギャラリーに魚を誇示する粟嶋プロであったが、
実は高野選手が釣った魚であった。
4インチパワーホグのテキサスで
一般的なストラクチャーを撃っての魚ということだが、
このチームにあっては高野選手の謙虚な姿が印象的だった。
4位入賞は見事である。



さらには松村寛・海老原守チームも650gと
小ぶりながら魚を持ってきた。
金光忠実・渡辺尚昭のフレッシュコンビも
720gとなんとかゼロ申告はまぬがれた。
巨漢コンビの早乙女剛・荻野貴生チームも750gと、
本人たちは不本意だろうが貴重な一本をウェイインした。

こうして各チーム、苦心の魚を持ち込むシーンが続いたが、
この後が悲惨だった。掛井亮宏・内山幸也チームの1790gを間に挟んで、
ほとんどのチームがゼロ行進。
延々とノーフィッシュのチームが屈辱の列を作った。


これでは安藤・小野チームのワンフィッシュ・ビクトリーという
前代未聞の椿事が見られるのか、一同固唾を飲んで見守っていたが、
「ちょっちまったぁ」と具志堅のように駆けつけたのが
草深幸範・中村雅晴チーム。
ライブウェルからひときわデカイ魚を抜き上げた。
しかし一本のみ。計ってみれば……うーん惜しいの2270g。
牛渡の桟橋でファットイカのノーシンカーで釣り上げたものだが、
この一本でこのチーム、なんと3位に入賞してしまった。
まさにエスパーパワーといえようか。
研究熱心で有名だけに将来が期待できる若手である。
ちなみにノンボーターの中村選手の賞品はテンリュウさんのロッド。
これも何かの縁であろうか。



だが、いまだ安藤チームの2340gはだれも超えられない。
残りのチームもわずか。土浦新港に魔の静寂が訪れた頃、
川口信明・林俊雄のマンウメコンビがやってきた。
ご両人とも表情はまことに明るい。
これはひょっとすると・・・との期待にたがわず、
ぬわんと三本の魚をウェイイン。
トータル3830gで堂々のトップに立った。
やっとまともなスコアが出たといえる。

長期予報で北西の強風を予想し、凪の時間を牛渡で、
吹いた後は風を避けられるバックアップスポットで
確実に一本一本を積み重ねるというゲームプランが見事にハマり、
堂々の優勝を勝ち取った。
リグも多彩だ。
牛渡ではまずチューブの3/16ozテキサスで1本、
自作ラバージグ+ポークで一本、
風が吹いてからはクランクベイトで一本と、
持てる技を総動員しての一日だった。
特筆すべきはパートナーの林選手の働き。
ノンボーターは12〜3年ぶりという林選手だが、
顔に似合わず弱気の虫に襲われやすい性格の
川口プロを終始励まし続けた。
「優勝は林選手のおかげ」
という川口プロの述懐は本心からのものであろう。
後半はクランクベイトを引きながらも人生を語り合うなど、
充実した時間を堪能したようだ。
やはりエロい話をしているようでは勝てないのであろうか。
これからは人生を語ろう。

さあ、そうなると後続の選手の帰趨が注目されたが、
一矢報いたのは佐藤健・澤部弘チームの二本1890g。
狩野プロのお得意スポットでパワーホグ、
連結のチューンドガルプのワッキーで真珠棚から搾り出した。
しかし5位どまり。



こうして、大勢は決した。

ほとんどの選手にとって、
惨憺たる結果に終わった2004年シリーズ第一戦だったが、
そんな中であくまで勝利の二文字を追い求めた川口・林チーム、
そして入賞チームの健闘は心から称えるべきであろう。

しかし、それにしてもこの貧果は嘆かわしい。
魚道設置の署名 運動など、できることは積極的に行って、
少しでも昔日の霞に戻すよう、行動しようではないか。

終わりですっ。

トーナメント・レポート(大和小平=やまとしょうへい)