52名が死闘を繰り広げた

晩夏のアジャスト合戦

優勝は臨機応変に「今日」を釣った

小島 貴・草深幸範チーム

 

2013 W.B.S.PRO TOURNAMENT SERIES 4th

August 25th at lake Kitaura

 

畢竟、バストーナメントはネイチャースポーツ。 

自然を相手にする種目である。 

対象が生き物であるというほかに、 

森羅万象、花鳥風月などすべてが結果に影響を及ぼすという理由から、 

そう定義される。 

刻々と変わる風、気温・水温などの気象条件、 

地形、水位などの状況を総合的に分析して、 

魚の居場所を特定し、釣り方を導き出すゲームである。 

ただし、それは教科書的に行っても意味はない。 

本能的に出来なければならないのだ。 

だからネイチャースポーツなのである。

 

つり人は自然児とならなければならない。 

風を感じただけで変化を嗅ぎ獲る能力が必要なのである。 

例えば、それまで投げていたリグを突然置いて、 

別のリグを投げる。 

そこに計算も打算もない。 

あるのはただ「これだ! と感じる」閃きである。 

この決断は一朝一夕には叶えられない。 

永年の蓄積によって研ぎ澄まされた野性がリグを変えさせるのだ。 

 

 

ゴルフも同じである。 

最近は距離計が流行だが、 

顔に風を感じて、迷わず1クラブ上げられる感性が必要である。 

距離計は風まで教えてくれない。 

そもそも、距離計に示された距離を撃てなければ猫に小判である。

 

  

従って、バストーナメントにおいて、 

プラクティスはあくまでもプラクティス。 

参考になる場合とそうでない場合がある。 

あくまでも当日に釣ることが大切なのだ。 

「プラではよく釣れた」 

よく聞くこの言葉だが、 

往々にして後に続く言葉は「でも……」とトーンダウンする。 

そう。 

バスーナメントは試合で釣ってナンボなのだ。 

私には「いいプラができた」という意味が良くわからない。

  

 

今回ほど、それを感じさせた試合はない。 

というのは、上位に名を連ねたのは、 

いずれも激変した試合環境をうまく処理して、 

結果を導き出したチームだからだ。

 

  

確かに、825日というタイミングで 

「秋」を意識することは難しいかもしれない。 

なんたってそれまで気温は連日35℃、水温は30℃オーバーだったからだ。 

誰しもがサマーパターンを追及する。 

当然である。 

クソ暑い中でどうやったら魚に出会えるのか、釣ることができるのか、 

それを突き止めようとする。 

そのプランはまさしく正解だった。

 

 

 

前日までは……。 

 

 

ところが、825日未明には雨が降り、 

当日は曇天。 

一時、日が射したこともあったが、 

にわか雨も降ったりして、涼しさはダイキンエアコンも必要ないほど。 

これはもう、完璧に「秋」。 

水温は28℃に落ち着いた。 

前日までの夏の釣りが無力になってしまった。 

選手はスタート前、厚い雲の下で戸惑う。 

ミッドウェー海戦で、 

魚雷と爆弾の選択に右往左往した光景が思い出される。 

 

 

そんな感じで530分にスタートしていった26チームだが、 

中には当初のプランを推し進めるものもいたし、 

中には徐々に釣りを変えるものもいた。 

そして、ハナから夏の釣りを諦めて、秋パターンにシフトしたものもいたのである。 

 

 

前述のように、上位を占めたのは状況を賢く分析して秋の釣りを実践したチーム。 

例えば6位の大藪厳太郎・鈴木敬弘チームはその典型。

 

試合前はピーカン無風でまったく釣れない状況の中で 

4kg5kg釣るパターンを浚渫で確認したが、 

土曜夜の天気予報で「ガーン!! 

日曜はおおむね雨予報だったのだ。 

チャンネルを変えても予報は同じ。 

「それはないでしょう」 

落胆した大藪選手だったが、 

そこで終わらないのが歴戦の強者。 

前週のプラで一日だけ曇天があり、 

外浪逆浦のシャローでDO-NOシャッドの早巻が効いたのを思い出し、 

「それしかない」 

とボートを外浪逆浦に向けた。 

この判断が大正解で、 

シャローのロックエリアをラン・ガンして一時間半で7本ゲット。 

ダメモトで戻った北浦の浚渫で入れ替えて3,790gというウェイトを作った。 

まさに当日のアジャストが奏功した典型といえよう。 

 

 

5位の小田島悟・安江勇斗チームも同じである。 

当初の狙いが北浦本湖のドック周り。 

突堤の先端のこぼれ石などで 

ナイスサイズがポロポロ出るプラに好感触を得たが、 

当日行ってみても音なし。 

そこで急きょ北利根、外浪逆浦、常陸利根川にエリア変更。 

テトラ帯などをメインにネコリグを撃ってリミットメイク。 

北浦に戻ってキロフィッシュを加えて4060gという数字を作った。 

「まー運が良かっただけですよ」 

といつものように飄々としていた小田島選手だが、 

実は研ぎ澄まされた釣り勘を持っている。 

ギャンブルも強い。 

だから今回のような決断が可能だったのだろう。 

安江選手のフォローも効果的だった。 

関東に移住して釣りの道を究めようとするこの若者の根性も大したものである。 

 

 

4位の川口信明・蛯原英夫チームもアジャスト成功組だ。 

大藪選手と同様にピーカン無風での戦略を持っていた。 

具体的には北浦本湖の水深のあるオダ。 

必殺ゼロダンが火を噴く予定だった。 

しかしこれは前述の理由で封印せざるを得なくなった。 

そこで彼らが向かったのが常陸利根川。 

最下流から全域を回ってとりあえず4本確保。 

それから北浦本湖に戻り、神宮橋周辺のあらゆるストラクチャーを撃って 

リミットメイク&入れ替えを果たした。 

リグは蛯原選手がゼロダン+ダブルモーション、またはキッカーバグ3.5 

川口選手がおなじみクリーチャーワームのテキサスリグである。 

 

 

6位の大藪選手、5位の小田島選手、そして4位の蛯原選手は 

この結果、年間レースにおいてもいい位置に付くことができた。 

とくに小田島選手は相変わらずトップの座を堅持している。 

 


 さて、いよいよベスト3だが 

3位は藤原勝己・斎藤徹チーム。 

このチームは当初から外浪逆浦を指名。 

そこで揃えて他で入れ替えというプランだったが、 

外浪逆浦が意外に好調。 

ローライトで無風という条件が表層系の釣りを爆発させた。 

エリア変更の必要もなくなり、 

結局、一日粘り倒して4240gというウェイトを記録した。 

具体的には3か所。 

シャローはフロッグ、杭や水門はファットイカなどで 

順調に釣果を重ねて行った。 

実は藤原選手、二日前にお子さんが生まれた。 

「その体重よりウェイトが軽かったら引退!」 

と奥さんに釘を刺されていたらしいが、 

4kgオーバーでその危機からは楽に逃れることができた。 

ちなみにお子さんは3千ナンボだったとか。 

パートナーの斎藤選手の健闘も光ったこのチーム、 

堂々たるお立ち台である。 

藤原選手
Tackle 1
ROD: ファンタジスタ レジスタ 70H
REEL: REVO BIG SHOOTER
LURE: スプロ ポッパーフロッグ
LINE: スパイダーワイヤー 50lb
RIG:フロッグ 

Tackle 2
ROD: パームス モーラ 68HF
REEL: REVO ELITE 7
LURE: ファットイカ
LINE: バニッシュ レボリューション 14lb
RIG:ノーシンカー 

Tackle 3
ROD: パームス モーラ 70HFREEL: REVO ELITE 8
LURE:ウルトラバイブ スピードクロ

LINE:バニッシュ レボリューション 14lb
RIG:ゼロダン

メインエリア:外浪逆浦
今回のキモ:フロッグで魚を探して、入り直してワームで獲る
 

斎藤選手
Tackle 1
ROD: ダイワ スティーズ 701HMHXB-XTQ ハスラー
REEL: ダイワ PX68
LURE: ドライブスティック4.5in
INE: バニッシュ ウルトラ14lb
RIG:ゼロダン、ジカリグ 5g 7g 

Tackle 2
ROD: ダイワ ブラックレーベル PF701MFB
REEL: ダイワ ジリオン 100 SHL
LURE: テッケル ホンカー (チャート)
LINE: ダイワ PE50lb
RIG:フロッグ


準優勝の速水孝将・橋本卓哉チームも、ある意味アジャスト組。

 

もともと、沖の浚渫などでボトムをコリコリ感じる釣りが好きだった橋本選手だが、 

天候の激変で後ろ髪を引かれつつも、作戦変更。 

北浦本湖のシャローフラットの杭を地味に撃つ釣りを展開した。 

「実はここしばらく、沖の釣りにハマリ、 

撃つ釣りができない身体になっていました。 

ですから今回はいい機会ですから、そういう釣りを地道にやろうと 

練習のつもりでダウンショットを置いておくような我慢の釣りに終始しました」 

と橋本選手は試合後に語っていた。 

また「試合は好きな釣りを追及してばかりではダメだと悟りました」 

とも語っていたように、ひとかわむけた成果も小さくない。 

パートナーの速水選手はヤマセナンコーのノーシンカーを駆使して、 

やはり杭から魚を引きずり出してきた。 

メガバスの柔らか目のフリップロッドが偉大なる効果を発揮したようだ。

 

橋本選手

Tackle 1
ROD: ダイワ 68M プロト
REEL:ダイワ PX68L +フィネススプール
LURE: ドライブクローラー 4.5 プロブルー
LINE: 8lb
RIG:ダウンショット 
メインエリア:本湖 杭
今回のキモ:ステイ 

速水選手

Tackle 1
ROD: メガバス デストロイヤー X7 Western Flip
REEL: ダイワ PX68L
LURE: ヤマセンコー4in
INE: メガバス ドラゴンコール10lb
RIG:ノーシンカー

   

そして優勝は小島貴・草深幸範チーム。 

4450gという素晴らしいウェイトをマークした。 

このチームは、 

釣っていくうちにパターンを見い出し、実行して成果を挙げた「ゆっくりアジャスト組」。 

ご存知のように草深選手は橋本選手と同じように、 

ここ数年、沖の釣りを極めていた。 

魚が固まって釣れること、ピンスポットを狙っているので、 

バッティングも少ないということで、 

ややハマリ気味であった。 

今回もその釣りが選択肢にないわけではなかったが、 

「久しぶりにローライトの中で釣っていくうちに、次第にワームの釣りから 

横の釣りにシフトしていく我々がありました」 

と自然体で路線変更。 

身体が勝手に環境変化にアジャストしていた。 

野生の勘が目を覚ましたのである。 

これが奏功して勝てる釣りに専念できた。 

ファーストフライトの5番スタート。 

それを利していきなりUターンしてマリーナ桟橋に直行する奇襲作戦を敢行。 

結果的にウェイインはされなかったが、 

そこでいきなり釣り上げる好調さ。 

セカンドフライトがスタートしている時である。 

もともと、潮来マリーナ周辺の魚影の濃さには着目していたこのチーム。 

スタート地点横の桟橋を始め、その沖のハードボトム、 

マリーナ下流の石積み、その周辺のハードボトムなど、 

プロダクティヴなエリアを多数擁するこの界隈は、 

同チームにとっては宝の山。

 

「ここで5本獲って入れ替えに走る」 

というプランは至極理に叶っている。 

結果、マリーナ周辺を核に、鹿行大橋から神宮橋まで、 

およそ10カ所をラン・ガンして、 

見込みが大きいところは入り直してリミットを達成した。 

ハードボトムはクランベイト、杭やオダはヘビダンと、 

釣り方も極めて適材適所である。 

ちなみに、このチームはビックフィッシュ賞も獲得したが、 

小島選手が山田ワンド入り口付近のジャッカーで、 

「神ブリッツ」を引いて獲ったものである。

 

小島選手 

Tackle1(ビッグフィッシュ)
ROD: ダイワ ブラックレーベル BL691MLRB
REEL: ダイワ TD-Z 103ML
LURE: OSP ブリッツ ブルーバックチャート
LINE: サンライン FCスナイパー14lb
RIG:クランクベイト 

Tackle2
ROD: テムジン レベリオン TXFC-67MF
REEL: ダイワ PX68
LURE: レッグレワーム
LINE: サンライン FCスナイパー
RIG:ダウンショット 5g
メインエリア:北浦本湖各所
今回のキモ:タイミング&ラン・ガン

 

草深選手 



Tackle1
ROD: ダイワ スティーズ STZ681MLFB-LM ライトニング
REEL: ダイワ PX68
LURE: OSP ブリッツ他
LINE: サンライン FCスナイパー8lb
RIG:5gクランクベイト 

Tackle2
ROD: ダイワ スティーズ STZ661MFB-SV ウェアウルフ
REEL: ダイワ PX68L
LURE: ドライブクローラー4.5 
LINE: サンライン シューター 10lb
RIG:ヘビダン シンカー:バサーズワームシンカーTG スリムタイプ5g 

Tackle3
ROD: ダイワ スティーズ STZ661MFB-SV ウェアウルフ
REEL: KTFアルファス フィネスカスタム
LURE: OSP ドライブスティック3.5in
LINE: サンライン シューター 8lb
RIG:ノーシンカー
メインエリア:北浦本湖
今回のキモ:バスとのタイミングを合わせ、何度も入り直す

 

 

こうして、話題も豊富に第4戦は終了した。

気になる年間ランキングも出た。 

残すは9月中旬の最終戦のみ。 

それが今年最後の試合になるのか、 

クラシックを戦うことができるのか??? 

あと3週間でファイナルバトルが始まる。 

次は土浦スタート。 

天候次第で夏とも秋ともいえる微妙なタイミング。 

最終戦も「その時」を釣るアジャスト能力が試される試合となろう。 

海の向こうでは宮崎友輔が2年連続のクラシック出場を決めた。 

日本でもナイスゲームを繰り広げよう!!

 

でもまあ、とりあえず今回はお疲れ様でした。 

全選手の健闘を称えたいと思います。 

オシマイ。

  

レポート・大和小平(やまとしょうへい)