蛯原英夫プロ プレスアングラーレポート斉藤憲治
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第20回目となる記念のプロクラシック。
私は蛯原英夫プロを第一希望として申し込みました。
防塵挺身隊として共に活動する某プロから、
蛯原プロの釣りについて話を聞くうちに、
氏の釣りをどうしても間近で見てみたいという思いが募ったのです。
朝のミーティング時に、乗船の組み合わせ発表で
蛯原プロの名前を聞いたときには、興奮で鳥肌が立ちました・・・。
当日は夜半からの豪雨。
ミーティング場所となった潮来マリーナの駐車場は
排水溝のキャパを超え、一面が踝までつかるプールと化し、
風も徐々に強さを増す状況に、本部の判断で待機となりました。
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選手は皆、気合が入りまくって前のめりのテンションでしょうから、
すぐにでもスタートしたかったはずです。
素人のプレスアングラーを考慮してくださった結果の
待機であったことも事実でしょうが、
私としてはクラシックをそういった理由で
妨げることはしたくはありませんでした。
様々な困難に打ち勝って出場権を獲得したプロの晴れ舞台です。
誤解を恐れずに言えば、
プレスアングラーも相応の覚悟で望むべきだと私は考えます。
プレスに申し込んだ殆どの方は、同じ意見であると思っています。
本部の判断は、常識的に正しいものであったことも承知していますので、
その点において苦言を呈す気持ちはございません。
ただ、プロの方々に気を遣っていただくのは申し訳ないと思いましたので、
あえてここで書かせていただきました。
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ディレイドスタートでしたので、釣りをする時間も短くなりました。
しかもモーニングバイトが期待できない時間に加え、豪雨に強風です。
各選手のプランに大きな影響を及ぼすことは必至なはず。
クラシック記念大会は、厳しい幕開けとなりました。
大きなうねりが打ち付けるマリーナのドックを出ると、
蛯原プロのチャンピオンは南にバウを向けました。
行き先は霞ヶ浦本湖。
待機の時間に今日のプランを聞いたところ、
最初に入るエリアで相当迷っている様子。
ベジテーション+のスポットを最初にやるべきか、
そこに隣接する別のベジテーションエリアに入るべきか。
とにかく本湖を目指します。
フライトは3番、300馬力の高速艇です。
希望するどこにでも入れます。
気になるのは、後続の選手の動き。
バッティングを考えた時に、
入るスポットの見極めは想像以上に難しいのだと思いました。
蛯原選手の新艇、赤のチャンピオンは火消し魂の具現と化し、
荒れた水面を進みます。
先行する他選手をあっという間に抜き去る爆走スピードですが、
波の衝撃や不安感は皆無で快適なドライブでした。
それでもまだ抑えた走りだったようです。恐るべし蛯原艇。
ファーストキャストは8:30。
麻生の石積み+菱パッチ+水門が絡むエリアでした。
水門から吐き出されている排水は濁流となり、
沖に向かってマッドラインを作り出していました。
蛯原プロのエリアは風の影響からか濁りが入ってきておらず、
水色も悪くありません。
杭や石積み、沈船やまばらな菱にスピナーベイトを通していきます。
8:40にヒット! も、エレキに巻かれ痛恨のバラシ。
「ちょっと痛いな。抜けば良かった。」
その後もスピナーベイトを投げましたが、音なし。
まだ発売前のキッカーバグ+リーダー無しのヘビダン(以降HDと表記)が
リグられたロッドに持ち替え、菱を撃っていきます。
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隣接する上流エリアには小田島プロが入りました。
スタート前にどちらに入るべきか悩んでいたスポットです。
やはりバッティングがありました。
暫くすると、清水プロも隣のエリアに入ってきました。
しかし、あちらは雨の影響による濁りが生じている様子。
最初の選択はこちらで正解でした。
初日の結果を見ても、その差は歴然でした。
黙々とピッチングを続けると8:50に待望のヒット!
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リグを菱の表面に持ち上げた瞬間、
水面にもんどりうってバイトしてきた魚は1キロクラスのナイスフィッシュ!
激しいバイトに私の心臓もバクバク、ひざも軽くガクガクです。
丁寧なアプローチは、低く早い弾道で送り込まれるピッチングです。
着水音までもが生々しく、釣れそうな気配に満ちています。
その頃の天候は、急速に回復傾向にあり、
時折日差しが出はじめました。気温も上昇していきます。
マット状になった場所にはリグを高めにピッチし
貫通させるキャストを繰り返していた9:15にバイト。
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関口さん、小林プロが観戦していた前で、
んズガンと魚を掛けキャッチしました。男前過ぎます。
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その後もバイトはあるものの、合わせるとすっぽ抜けてしまう状況に、
魚のコンディションが変化してきている様子でした。
続くショートバイトや雷魚をキャッチした後の10:03に
「よし、移動しよう。勝負!」と向かった先は小高ドックの下流で、
ここも菱のマットが点在するエリアでしたが、
ひどい濁りと化していました。
一応、チェックはするものの、
「水、汚い。壊滅ですか?」
「水悪いな〜。止めるか、戻るべきか、前のところで粘ったほうが良いか・・・」
と葛藤します。
20分ほどやったところで、最初のエリアに戻ることを決断。
戻った後もバイトは相変わらずありますが、キャッチには至りません。
10:50 「移動します。もう一度来よう!」
と一路、東浦方面へ。
11:10 流入河川河口に到着し、
リーズや杭を撃っていくと、11:16にやや沖目の杭でヒット!
テキサスリグに来た魚は、ジャストキーパーといったサイズ。
川からの流れも相当の濁りでしたので、あまり深追いはせず移動。
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ここからが我慢の時間でした。
霞本湖をランガンし、浚渫へはヘビキャロ、石積みにはクランク、
スピナベと様々なリグを試すも反応は得られず。
結局、最初のエリアには戻らずに、霞を後にし北浦方面へ移動しました。
途中、潮来大橋でエレキトラブルに見舞われ、
対処していた和田プロに声を掛けに接近。
「大丈夫か?変えのエレキはあるのか?」
試合中に、しかも自分が釣れずに苦しんでいる最中に
こういった行動ができるでしょうか。
当たり前のように気遣いができる蛯原プロに、
惚れてまうやろ!と言いたくなったのは本当です。
その後、プラで感触のあった北浦に向かったのですが、
そのスピードの速いの何の。
ちょっと下を向いた瞬間に、
私のOAKLEY×SUENAGAはすっ飛んで行きました・・・
それはさておき、北浦ではノーバイトのまま初日を終えました。
結果は3本、2,370グラムで4位。
トップの橋本プロのウエイトともそれほど離れていません。
やはりこの天候に一同が相当苦しんだ様子。
十分、優勝が狙える位置に付けました。
2日目。
スタート順は初日と逆になり19番目でしたが、
北利根川のスローエリアに付く頃には、
先頭を行く選手が目視できるほど追い上げる走りに、
改めて蛯原艇の速さと操船技術に驚きました。
スローエリアを抜けると、初日のファーストエリアに向かいます。
隣接するエリアには、既に小田島プロのチャンピオンが浮かんでいました。
蛯原プロのスポットには誰も入っていません。
6:45 釣り開始。
しかし、状況は激変していました。
風向きが初日と逆になっていた影響をモロに受け、
水が一気に濁っていたのです。
「濁ったな〜。」
しかし、プラではこの風向きのときにデカイ魚を掛けているとのこと。
期待は残っています。キャストを開始した5分後の6:50に早くもヒット!
ジャストキーパーながら、
この水でもやりきれる根拠となりえる結果に一安心します。
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リグは昨日に引き続きHD。
そして7:06にも再びヒット! こちらもキーパーです。
気になるのは、明らかにサイズが落ちている点。
しかし、蛯原プロは「良し、丁寧に1本1本やっていこう!」
と自分に言い聞かせます。
昨日のタフコンディションが、今日も続くことが予想されます。
1匹の重みを痛いほど理解しているが故の台詞でした。
7:25にもヒット! こちらもジャストキーパーサイズですが、
「贅沢は言わねぇ・・・」とガッツポーズ。乗ってきました。
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選手のこういった姿を見られるのは、プレス冥利に尽きます。
一緒に戦っていると勝手に思い込んでいるのですが、
共に喜び、このままの勢いで行って欲しいと心から思える瞬間なのです。
その後すぐにノンキーパーがヒット。
ここでの限界を感じたのか、8:02に移動を決意。
気が付くと清水プロのレンジャーが隣のエリアに浮かんでいました。
向かった先は古渡。風の当たり具合を確認しつつ、
撃つスポットを見極めながらの移動でした。
経験が物を言う状況ですが、
蛯原プロは実際の水色を目視することを怠らず、
必ずチェックを入れました。
そのエリアまでわざわざ行くのも、決して無駄な移動ではなく、
後から後悔しないための重要な行為なのだと思います。
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風の当たらないストレッチのブッシュやリーズを
テキサスリグでひたすら撃ち続けます。
ここでのキャストは圧巻でした。
風裏といえども波立つ水面にスキップさせて
ブッシュの最奥までルアーを送り込む技術。
スキップさせない場合も、
低空を高速で飛んで行くルアーに見とれてしまいます。
キャスト後のライン処理も枝に絡ませないように、
メンディングを怠りません。
そして久しぶりのバイトは、残念ながらキャットでした。
その後も各所をランガンしますが、バイトが無いまま時間だけが過ぎます。
そんな状況の中、9:48にラインが走り豪腕が渾身のフッキング!
しかし、何とラインブレイク。
「あれはでかいぞぉ。ラインを結びなおしておけば良かった・・・」
重い空気になると思いましたが、
蛯原プロからはそんな雰囲気は感じられません。
黙々とキャストを続けます。
数時間バイトが無かった状況下での合わせ切れは、
その後のリズムが崩れ、負の流れに陥る鉄板のはずですが、
蛯原プロにおいては、そんな気配を微塵も感じさせません。
残念な思いを口には出すものの、
キャストが乱れるようなことはありませんでした。
精神力強さが並外れて強いのだと思いまが、
これは本当に凄いことです。
精神が釣りに及ぼす影響は多大にあるはずです。
それをコントロールできることが、長年に渡って
クラシックにクオリファイされる要因だと得心しました。
そして10:10に朝一の菱マットエリアに戻りました。
隣接するエリアにはまだ清水選手が見えます。
それもそのはず、2日目のウェイトを見れば当然でした。
11:12にそのエリアを諦め、移動を決意。
霞本湖の数箇所をランガンした後、
北利根川のリーズをHDで撃っていきました。
ウェイクボードによる引き波が絶えず当たって岸際には濁りも見られます。
じっくりとリーズ+杭を撃ち続けた12:00に、
リーズからやや離れた沖目に立つ杭を撃つと待望のバイト!
こちらも渾身の合わせが見られました。
キャッチした魚は、昨日と合わせても今大会最大。
軽く見ても1キロを超えていました。
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「よし!後一本!」
バイトは続きますが、またしてもショートバイトで乗らず。
同じストレッチを再度流し直しましたが、キャッチには至りません。
ランガンを繰り返し、最後は昨日の北浦は蔵川にある
鉄杭を打ちに行きましたが、
リミットを揃えることはできず、帰着となりました。
残り僅かな時間に、昨日は全く反応の無かった北浦に今日も走ったのは、
天候がこれだけ大きく変わった状況下では、
その可能性を試さずに後で後悔したくなかったからだそうです。
そういう点でも蛯原プロは、やるべきことをやりきったと仰っていました。
最終成績は小田島・清水プロ両名優勝に次ぐ3位。
ウェイトは260グラムと僅差でした。
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「たら・れば」は十分承知の上ではありますが、
初日1匹目のバラシ、2日目のラインブレイクを思わずにはいられません。
蛯原プロほど、クラシックを勝ちたがっているプロはいないのではないか。
こう書くと、他のプロからお叱りを受けそうですが、
私にはそう思えて仕方ありません。
「優勝以外は何の意味もないんだよ・・・」
ウェイン直前に呟いた一言が、今も頭から離れません。
私も優勝した蛯原プロを見たかった。
優勝された小田島プロと清水プロとの差は何だったのか。
エリア、リグ、狙っている魚・・・
エリアは3名とも数百メートルほどの範囲で共通していました。
菱を釣るという点でも同じです。
ウェイト差が260gというキーパー1匹分以下の僅差であったことからも、
このエリアのポテンシャルが如何に強かったかを証明しています。
ルアーこそ違うものの、リグは共通していました。
蛯原プロはHDを多用しましたが、菱を効率的に釣るために使ったリグであり、
スイミング気味に使っていた点で大差は無かったと思います。
考えられることは、水のコンディションしかありません。
初日の状況では蛯原プロが釣るベジテーションは濁りの影響を受けず、
生命感に満ちていました。
2日目は風向きが変わり、濁りが入りました。
恐らく、蛯原プロのエリアにいた魚は、濁りを避け、
小田島・清水プロのエリアに移動したのではないでしょうか。
勝負の世界は何と難しく、厳しいものか。
身に染みて体験できた2日間でした。
実際に、乗船させて頂いた感想は、率直に「凄い」の一言です。
幼稚な表現で恐縮ですが、
キャストの精度・ボート操船・エリアを見極める根拠など、
全ての動作が高い次元で、しかも丁寧に行われていました。
私ごときが言うのも恐れ多いのですが、
霞ヶ浦水系における釣りのスタイルとしては、
一つの完成形なのではないかと思えるものでした。
限りなく優勝に近い釣りを目前で見られたことは、
今後私の釣りに深く影響するはずです。
決して諦めない気持ち、周囲を気遣う心のゆとり、後悔しないための行動。
非常に勉強になりました。蛯原プロ、ありがとうございました。
同船を希望して本当に、本当に良かった。
このレポートを打ち込みながら、興奮が再び甦ってきました。
20回目の記念となるクラシックにプレスとして採用してくださった
W.B.S様にも感謝致します。
震災の復興はまだ先ですが、私にできることをしつつ、
今後もW.B.Sと霞ヶ浦・北浦を応援していきます。
30回目に向けて、今後も躍進されることを願っています。
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