2008 W.B.S.プロクラシック17


村川勇介 プレスアングラーレポート 古田ひろよし



「払拭。集中。そして3位入賞!」

2008W.B.S.プロクラシック17。
村川勇介選手の釣りを間近で見たくて、
久しぶりにプレスとして同船させていただきました。
最終成績は3位入賞。
この結果が良かったのか、惜しくて残念だったのか。
その様子をレポートしたいと思います。

まず、最初に。
出場選手がどのように試合のプランを立て、
そしていかに戦い抜くのか。
それはプラクティスの時から始まります。

今回、本部にお願いして許可をいただいた上で
前日プラの様子を取材させていただきました。
すでに村川選手は3日間以上プラクティスをおこなっており、
その最終日となったのが前日でした。
試合のプラクティスには、いくつかの意味合いがあります。



1つ目:まずはバスの多いエリアを探すこと

どんなに腕の立つ選手でも、
バスがどこにいるかが分からないと、勝負になりません。
また、日々変わる天候や気象条件により、
バスがいるエリアも違います。
プラクティスでは、いる場所を見つけるとともに、
気象が変化したときにどのように移動するのか、
その行き先をチェックしておくことや、
あまりそういう状況の移り変わりに
影響を受けない場所を探すのも重要になります。

2つ目:バスの様子はどうなのかを知ること

バスがいる場所を見つけたら、
今度はそのバスに口を使わせるための釣り方を試します。
ガンガンエサをとっている感じなのか、
それともあまりやる気がないのか。
それぞれの状況ではどういうルアーやリグで攻めればいいかを、
プラの時に試しておきます。
もちろん当日に天気が変わればバスのコンディションも違いますので、
次の手を見極める必要があるのは当然のことです。

3つ目:どういう勝負になるのかを予想すること

試合で勝とうと思ったら、
やはりどのように挑んでいくかの「戦略」が重要になります。
自分がプラクティスの時に見つけたパターンが、
吉と出るか凶と出るかは、試合が始まってみないと分かりません。
プラの結果を信じて、その場所でえんえんバスを撃ち続けるのか。
それとも良さそうな別の場所を見つけてラン&ガンで拾っていくのか。
また時期的に良くなる場所も見ておいて、
メインにしたいスポットがダメなときの「次の手」が
考えられるようにしておかなければなりません。

私が同船した最終日は、
この中では3つめの「次の手」を探すための日でした。
しかし回ったどのエリアも反応がなく、
やはり最初に考えたエリアでみっちりと釣るのが一番良いだろう
という結論に達したようです。

そしていよいよ大会がスタートしました。

初日は私は同船せず、写真撮影のために霞ヶ浦をぐるっと回りました。
するとやはりプラの時に聞いていたメインエリアに、
村川選手の姿がありました。
しかも魚を釣っています。



初日の結果は3340グラムで4位タイ。
トップの平本選手との差もわずか150グラムで、
十分逆転&優勝が見える位置に付けています。



最終日はあまり「釣れ!釣れ!光線」を出して
魚に悟られないようにしなければ、
とちょっとプレッシャーを感じつつ、
またパーティの余韻に浸りながら眠りにつきました。


いよいよ勝負の最終日。

前日は曇り時々雨という天候でしたが、
最終日は良い天気に恵まれました。
陽射しがあるのは良いのですが、
天気が急変するときは、風が吹きやすいのも霞ヶ浦の特徴。
突風が吹かないように祈りつつ、ボートに乗り込みます。

「優勝」の二文字が見えている村川選手は、
かなりのプレッシャーなのかな?と思いきや、いつもの感じ。
ボートをスロープからおろして、
いつものように出発前に朝ご飯を食べています。
でも昨年12月の結婚披露パーティの時も、
そういえばいつものような雰囲気に見えて、
ガチガチに緊張していたと言いますので…。

クラシックのフライトは、初日の最終フライトから順に出ていくカタチ。
初日は15番フライトでしたが、最終日は9番目に出発します。
スローエリアを抜けると、一気に東岸南部の
リーズのあるエリアへとバウを向け疾走。
朝の空気は冷たいですが、乗り心地がマイルドなトライトンと
鏡のような湖面のおかげで、腰も痛くならずに一気に到着しました。

到着して、まずはリーズの南側にボートポジションをとります。
手にはロッククローの付いたテキサスリグ。
水深は1.3メートル前後です。
フリッピングで静かに落とし込み、
際のへこみを探る釣り方です。
1投めは変化なし。

ピックアップして隣のへこみに落とし込んで、
少し待った瞬間、村川選手がガツンと合わせました。
そのまま一気にリーズから離し、
一気に取り込んだその魚は800グラム前後のナイスサイズ。
村川選手いわく、
「プラの時はフォールで食ってたんですけど、
この魚はボトムでステイの時に食ってました。
ピックアップしようとした瞬間に魚が食ってるのが分かり、
ちょっとあわてました。よかった〜獲れて」。



その言葉の通り、ファーストバイトをしっかりランディングでき、
ちょっとホッとした様子。
しかもまだ試合は始まったばかりです。
周囲を見ると、水面にはヒラヒラとシラウオが泳ぐ姿が見られます。
しかしボイルが起きたりという様子は見られません。
昨日の朝に比べて、気温も少し低めです。

このパッチは最初の1尾だけで反応がなく、
別のパッチを目指して小移動をしました。
沖のエッジから攻めますが無反応に終わり、
7時25分に最初のパッチへと戻りました。

この日の攻めは、この周辺にあるリーズのパッチを丹念に攻めていくこと。
その理由を聞いてみると
「プラの時に釣れていたのもありますが、
 冷え込んだときに水温の変化の影響を受けにくい場所ということで、
 ここをメインのエリアにしました」とのこと。

プラの時の経験により、エリアを絞り込んで迷いを払拭したことが、
試合当日の展開をいい方へと導いているようです。

7時50分、2尾めをヒット

ファーストヒットから1時間が過ぎても、次のバイトが来ません。
太陽もかなり高い位置まで上がってきました。
これまではテキサスリグで探っていたのですが、
ちょっと気分転換にストレートワームのノーシンカーに持ち替え、
同様に際に落とし込んだその時、またロッドが曲がりました。
サイズは少し小さめの32センチ。
キーパーギリギリの魚です。
「パッチの直下に浮いてた魚。
ギリギリなのでこの魚を入れ替えることができたら最高なんだけど…」
といいつつ、大切な1尾をライブウェルへと入れます。



ここから、攻めのパターンが変わりました。
最初はロッククローのテキサスリグで、
シンカーのウエイトは10グラムと5グラムの2タイプ。
それに、ストレートワームのノーシンカーと、
ロッククロー同様の2種類のシンカーウエイトの
テキサスリグセッティングをプラス。
これを交互に使って、バスの様子を見ていきます。
5グラムシンカーにはZAPPUスーパーすりぬけという、
タングステンシンカーを使用。
釣るエリアは3箇所のパッチをローテーションするように回ることで、
状況変化を見るとともにスポットを少し休める意味合いもあります。

8時45分3尾め。ここまで順調でしたが…

3回目のバイトが来たのが8時45分。
前日に釣ったシーンを見たパッチです。
すでに1〜2度撃った場所ですが、
陽が高くなって入り込んできたのでしょうか。
1尾めと同じぐらいのナイスキーパーです。





残り時間は移動時間を考えると、あと4時間ぐらいありましたが、
ここからしばらく無反応の時間が過ぎました。

これまで撃ったリーズ、少し離れた場所のリーズと、
釣れない時間はいくつかのパッチの様子を見に行きましたが、
どこもパッとしない状況。
ワームのタイプもいろいろと変えてみますがどれも不調。
それならばと、10時30分過ぎに、
これまで最も魚が釣れている2番目のリーズへと戻ってきました。
この周辺でギリギリまで粘ると腹をくくったようです。

ちょっと趣向を変えたら…ヒット!

ここまでは最初の信念通り、
リーズのパッチの際を丁寧に撃っていたのですが、
少し気分転換に隣接するストラクチャーへ
ストレートワームのテキサスを落としたところ、
ガツンと良いアタリが!
4尾めは800グラム前後のなかなかのサイズです。



これでリミットまであと1本。
残り2時間で達成できるか。
胃の痛くなりそうな展開が続きます。
しかし、外側でも可能性があることが分かり、
やることが手詰まりになってしまったのではなく、
ちょっと期待が持てます。
そんなやる気の出る雰囲気で、朝イチのパッチへと移動します。

11時25分、いきなりのバイト!しかし…

外側で釣れたことをヒントにして、今度は少し外めへとアプローチ。
そっとフリッピングで落とすと、いきなりひったくるようなアタリ!
しかし、うまくフッキングできませんでした。
「食ったあとボートに向かってきたので、しっかり掛からなかった…」
と村川選手はかなり残念そう。



結局、このパッチではこのアタリのみで終わり。
早々に一番釣れていた2番目のパッチへと戻ります。
現在、12時15分。ラストチャンスにかけるのです。

最後の時間、これまで使っていなかった
シャッド系ワームのテキサスなどもトライしましたが、
これにも反応はなし。
テキサス以外でも、バズベイトやスピナーベイトも引いてみますが、
口を使ってくれません。
気が付くと午後1時。ここでリーズを諦め、一気に土浦方面へ。
最後に対岸のドック外側で数投しますがダメで、
この日の釣りは終了。時間通りに帰着しました。



リミットには届かなかった最終日。
2890グラムをウエイインした村川選手のトータルウエイトは6230グラムでした。
山田塾長の驚異的なまくりと、
昨年の年間チャンピオン・蛯原選手の追い上げがあったものの、
初日上位陣の中ではひとり成績を崩さず、
3位入賞を果たしました。



試合後、お話しをしていると
「あとちょっとだったのは悔しいけど、今日できることはやりきったと思う。
だからしょうがないかな。来年は1試合でも優勝できるように頑張りますよ」。
と、力強く話していらっしゃいました。
本当にお疲れさまでした!そして入賞おめでとうございます!

トーナメントは、「7時間のうちに5尾釣る」ムズカシサを教えてくれます。
広い霞ヶ浦水系、どこかに行けば釣れそうな気もしますが、
どこに行っても釣れない気もするのです。
そんな中で、しっかりと5尾揃えて、
しかもいいサイズを持ち込んで、
毎試合周囲にアッといわせるウイナーが生まれています。

今回は優勝まで届かなかった村川勇介選手。
スポットにフリッピングで静かに丹念に落とし込んでいく丁寧な釣り方や、
迷いを払拭してエリアを絞り込み、
ワンキャストごとに集中する精神力の強さを、
間近で見せていただくことができました。
W.B.S.の中ではまだ若手ですが、
将来的に霞マイスターを目指すべく奮闘している選手。
今シーズンは良い成績で終え、クラシックも3位に入賞。
来シーズンの活躍も期待されますので、ぜひ応援してください。

また、これを読んでいる方に、
一度プレスアングラーを経験するといいですよ。
百戦錬磨の選手の釣りを見ることは、
みなさんの普段の霞の釣りに役立つこと間違いありません。
またレギュラートーナメントのウエイインのコメントも、
いろいろなヒントが隠されていますので、
ウエイインショーの観戦もオススメです。
私も来シーズンも引き続き、
カメラ片手に会場へとお邪魔する予定です。