2006W.B.S.プロクラシック15

中嶋美直 レポート:プレスアングラー 内田 淳

バスフィッシングに魅了されおよそ10年、関東に住む私は、
霞ヶ浦を舞台にトーナメントを繰り広げるプロの団体、
W.B.S.の存在が何時しか気になるようになり、
毎日仕事を終え家に帰るや否やPCを立ち上げ、
気が付けばW.B.S.のホームページを開いていた。

ある日のこと、いつものようにホームページをチェックしていると、
「クラシック・プレスアングラー一般募集!」の記事が…。
「試合に参加できるのか、それも1年に1度の大舞台に!」
私は迷いもせず、駄目もとで応募してみた。
そして数日後、W.B.S.事務局長の松村さんより、
「プレス当選」との連絡が…。
翌日からもうその気になっている自分がいた。
(仕事が手に付かなかったのは言うまでもありません)

11月11日当日、真っ暗の常磐道をひた走り土浦新港へ。
予定より早く到着すると既にスタッフの方が大会の準備を始めていた。
指示に従い車を止め、携帯電話で天気予報の確認。
曇り、昼前から雨との事だった。
しばらくするとボートを連結させたRV車が次々と港に入ってきた。
「かっこよすぎる…」私の緊張も序々に高まってきた。

予定の時刻になりスタッフの掛け声とともに本部に集合。
ミーティングを終えた後、フライトの抽選とパートナーが発表され、
私は中嶋美直選手のプレスを務めさせていただくこととなった。
準備を終えて早速乗船。ボートはストラトス、
なんとエンジンはエビンの環境対策のNEWエンジンを積んでいて、
見るからに速そうである。
「まだ慣らし中なんですよ、でも結構速いですよ!」と中嶋プロ。
さらに緊張が高まる。

スタッフの誘導でランチングを済まし港内で待機、
幸運にもフライトは3番目である。
スタートラインに並び合図とともに「それでは、行きま〜す」と
中嶋プロはアクセルを開けた。
選ばれた22人の男たちの戦いが今始まった。
ボートは一気にプレーンし水面を割っていく。
前のボートの引き波を越えると波に合わせて下半身が浮き、
そして速度が上がるにつれ、もの凄い風圧と衝撃を全身に受ける。
日頃からオートバイや車などを乗り回し、
乗り物には慣れているつもりだったが水上の100キロオーバーは
私の想像を遥かに超えていた。
「なんなんだこの体感速度は…」
そうして周囲を見る余裕もなく20分程で最初の目的地に到着、
中島プロから「道、間違えちゃいました」と一言…「えっ!」



6:50、早速ロッドを握り、釣り開始。
ふと魚探を見ると水温は14.8℃を示していた。
川筋のマンメイドストラクチャーをテキサスリグと
ワッキーリグのローテーションで攻めていく。
「やっぱり水がわるくなってるな〜、水温も下がってるし。
ここ急に釣れなくなっちゃったんですよ〜霞ヶ浦。
プラでは反応よかったんですけどね〜」と中嶋プロ。
霞ヶ浦の現状を詳しく聞かせてくれた。

ここ何日かの急激な冷え込みで湖の状況が激変したという。
「確信の持てる場所で釣りきるしかないっすね〜」
と中嶋プロのこの2日間に賭ける意気込みを感じた瞬間だった。
時は1時間、2時間と過ぎて行くが、まだ魚からの反応はない。
いつの間にか船上では車の話で盛り上がっていた。
乗り物好きの男にとって、つい熱くなってしまうネタである。
つい私も夢中になってしまった。
この頃から予報どうり雨が降り始めていた。

こうして開始から3時間、河川内で小移動を繰り返し、
丹念に探ってみたがノーバイト、次のポイントへ移動となった。

10:10、ここでは崩れかけた水中に沈むストラクチャーを
同じくテキサスリグとワッキーリグのローテーションでチェック。
全神経を右手に集中させボトムを感じ取っていた。
そして30分後、テキサスリグに待望の1匹目がヒット。
無事ランディングを済ませると1キロはありそうな見事なキーパーだった。



「やっときたよ〜、これでウェイインできる」
私も心の底から喜んだ。
この後、さらに集中力が増した中嶋プロは、
同じ場所を丹念に攻め続けるが後が続かず対岸に移動?
既に降り始めていた雨はさらに強さを増し、
コンディションは益々悪化していった。

11:30、ドッグの周りを流す。
ここぞというピンスポットにはテキサスリグ、時折スピナーベイト、
クランクベイトといったハードプラグを交えながら丁寧に攻めていく。
沖の杭に移動、しかし魚からの反応はない。
静かに時間だけが過ぎて行った。

13:15、帰着の時間も迫り、新港へ向けて移動。
途中、近場のオダに入り最後の粘りを見せるが
バイトには至らずタイムリミット。
1本でのウェイインは990g、初日を13位として終了した。

夕方からは恒例のパーティーが開催され、
吉田幸二さんやスポンサーの方々など会場は凄い顔ぶれだった。
普段見れない選手の顔もみられて私も明日の釣果を願いながら、
飲んで食べて楽しい時間を過ごした。

11月12日、2日目。前日と同様にミーティング。
懸念されていた強風のためスタートを1時間見送る事になった。
悪天候での出航は人命に係るので、適切な判断であったと思う。

7:30、本部での会議の結果、
選手全員安全航行の遵守という呼びかけにより開催が決定。
選手、プレスともに準備に取り掛かり新港に浮かんだ。
前日より湖面はざわついていたが、
中嶋プロは迷うことなくアクセルを開け、昨日朝イチに入った川を目指す。

7:45、川は静寂に包まれ貸切状態。
モーニングバイトを期待しキャストを開始。
前日と同じ釣りを展開する。
水温12.6℃、昨日より2℃も低くさらにタフ化が予想された。

8:15、杭をテキサスリグのフリッピングでスローに攻めていると
数投目にバイト。小型ながら立派なキーパーサイズ、
朝イチから貴重な一匹を手にした。思わず顔がほころぶ。
「このまま続いてくれ」とすぐさまキャストをはじめるが、
霞ヶ浦の女神は微笑まなかった。仕方なく移動を決意した。

9:50、2箇所目も前日と同じエリア。
明らかに水質は悪化し、水面も川とは違い波立っている。
「大分荒れてきましたね、ここは風裏だからあまり影響ないけど」
と本瑚の模様を気にする中嶋プロ。
確かに対岸に見える工場の煙突の煙が真横に向いている。
風も次第に強くなり、これ以上は危険と判断し新港に船を向けた。
すると岬を越えた沖は激変し、まるで海のようだった。
白波が船に襲いかかり、大量の水しぶきをかぶる。
船首が立ち上がり前が見えなくなる。
久々に恐怖感を味わった。
中嶋プロの操船技術により、何とか新港付近まで戻ってこれた。
釣りをしながらも周囲の状況を把握しておくことは、
とても大事なことだと痛感した。

12:40、比較的安全な土浦入りに流入している桜川に入り、
最後の粘りを見せるが残念ながら時間となり、
2日間のクラシックは終了となった。
結果、前日同様1本でのウェイインとなり、トータル1550g、
順位は変わらず総合成績13位となった。

成績こそ13位で終わってしまったが、
ノーフィッシュが相次ぐこの厳しい状況の中、
両日ともにウェイインできたことはすばらしい結果だと思う。
改めてプロの1匹に懸ける執念を感じた。



今回、プレスアングラーという2日間の同船で、
自分の中の様々な疑問も解決できたし体験もできた。
そして試合に始まり、パーティー、ファンサービスに至るまで
W.B.S.の魅力を改めて感じました。

中嶋プロ、2日間お疲れ様でした。
船上でも気を使っていただき大変感謝しています。
とても貴重な体験をさせていただきました。

最後に大会の運営に携わったスタッフの皆様、
そして選手の方々、お疲れ様でした。
とても雰囲気の良い中で2日間を過ごすことができました。
いつか自分も参加できる日が来ればと、
心から思っております。