World BassSosiety 2004W.B.S.プロクラシック13

宮澤孝博選手同船レポート 川村加奈枝


今回の台風22号は、参加者全員に過酷な試練を与えてしまった。
宮城県からのプレス参加であったため、
台風直撃のニュースを見て開催の有無を本部に問い合わせしたところ、
当日の状況を見て判断するということで、
とりあえず8日の夜に霞ヶ浦に向けて出発した。

大会初日の朝5時に土浦新港に行ったものの、
既に新港のスロープは満水状態。
風も雨も強く大会はもちろん中止となった。
その足で玉造方面に向い、霞ヶ浦大橋を渡る。
白波が立ち込める本湖を見て、明日開催できることを願った。
9日晩の記念パーティの途中で、土浦新港が水没している話もあり、
私自身昨年からトーナメントに関わる度に雨や台風に当たっていたため
もしかして台風を直撃させたのは、
本当に自分じゃなかろーかと心底思った・・・。

翌朝5:00。
暗闇のなか訪れた土浦新港は半分水没していたが、
なんとか開催の運びとなり、
少々ホッとして同船する宮澤選手の顔を見ることができた。
宮澤選手が準備したロッドは6本。
すべてにベイトリートが取り付けてあり、
それぞれに彼がプラクティスで実績をあげてきたと思われるリグが
取り付けられている。
「今回は下まで一気に行くから」
と前日のパーティの席での彼の話に、
ダイナミックな釣りが見れそうだと予感していた。
しかも霞ヶ浦でバスボート初体験!
と私の心もますます躍っていた。

ところが、荒れ狂った台風は霞ヶ浦にいろいろなモノを落としていった。
杭や角材そのたモロモロが水面のあちこちに浮かぶ。
全開で走りたくとも、その落し物達が行く手を阻む。
6:20。
スタート直後からまさに選手にとっては、
ストレスのたまるトーナメントが始まった。



「前日プラクティスには入れなかったが、
前週前々週のプラクティスの感触でミドルレンジの杭を中心に、
1.5m〜2.5mを狙うよ。ただ、水温がプラの度に、
27度〜23度と低くなっていった。
まぁ、今日は様子を見ながらやっていくよ」
とのスタート前の宮澤選手のコメント。

「ちょっと寄り道」と称し、古渡に船を進めたところ、
あまりのひどい濁りに、一度もエレキをおろすことなく、
そのまま洲の野原へと向かった。
6:55。真珠棚に船を進めたところ、その光景に唖然とする。
目の前に見える鉄杭が、すべてボートと同じ高さになっていた。
本来であれば、スタンディングポジションの
頭部くらいにあるものがだ・・・。
こんな広い霞ヶ浦が1m以上も増水しているとは、台風恐るべし。

「プラではベイトが1mラインにいて、
でライズしてて・・・水面近くまでいっぱいいる感じで、
これはキてる!ってトップでボコボコ出たんだが、
こんなに状況がかわっているとはねぇ・・・」
という彼の話と共に魚探のフィッシュアラームが頻繁に鳴るも、
沈黙した湖は応えてくれなかった。

7:35。 見慣れない風景に変貌してしまった葦際のシャロー、
であった場所に船を進める。
お気に入りの「ヒマワリ」(ゲーリーのイカグラブ)を投げていくと、
彼のロッドが突然曲がった。
魚探で映し出されていた大きな影はもしかしてこれだったの?
はじめて霞ヶ浦のキャットフィッシュを、
アメリカナマズだけにナマで拝ませていただくことに・・・。



突然の来客に、次は本命が?との期待もあったが、
その後そこでは不発に終わり、8:20北利根の葦へと移動。
ところが、増水はもちろんのこと流れが速く、
「ヒマワリ」が無情にも吸い込まれていく。
風もだいぶ強くなっている。
これでは釣りにならないと、10分後、対岸のテトラに船をすすめる、
ここでもテンポよくフィッシュアラームが鳴り続くが、
スピナーベイト、シャロークランク、テキサスリグ、
ノーシンカー・・・どれを投げても反応はない。
魚はどこにいったのか?
(これまで1mの水深にいたのなら、
急激な増水でも同じ1mラインにいると考えられるだろーし、
もしかして増水しすぎて、
手前に魚たちが出てきてしまっているのだろうか?
口を使わないだけなのだろうか?)
バックシートでビデオカメラから彼の顔を覗きつつ、
色々な考えが頭の中をよぎり、
彼のロッドが曲がってくれることを祈った。

その後船を麻生町側へと船を進めていくも、スポットが見つけられない。
いつも見える杭も石積みも既に水の中。
その後三角テトラでの望みも大量の鯉釣り師の竿で、
釣りをする場所が限定される。
どんどん北上して。
11:30、ようやく杭や石積みがギリギリ見えるエリア発見。
残された時間は2時間。
宮澤選手は丁寧に杭や、石積みの岸側を打っていく。
途中ヘラ釣りのおじさまが、
タナ合わせ中に鯉をスレでかけたらしく、
突然目の前で竿をボッキリ折ってしまった。
しかも折れた竿が水中に落ちたため、宮澤選手はしばし竿の救出。
スレでかかった鯉をハリからはずし、一日一膳。
キャットも鯉も見られたので、あとはバスだけ・・・!



しかし、今日の霞ヶ浦はウェインのインタビュー同様、
彼に「釣りをさせてくれなかった」。
どの選手も「どこに魚はいるんだ?!」と追い詰められたことだろう。
それでも魚を追い求め、帰着5分を切ろうとも決して諦めず、
最後の1本の杭にもチャンスをかける宮澤選手の姿に感動を覚えた。
魚をウェイン出来なかったことは非常に悔やまれることであるが、
釣り方、操船、それ以上に、同じトーナメンターとして
精神的にビリビリ伝わるものがあり、
大会終了後、気づけば彼の釣りの虜になってしまったことは言うまでも無い。



これほどにバスフィッシングが楽しく、
トーナメントが面白いものであることを再認識させられた。
この広い霞ヶ浦で自分の足で魚を探しにいく。
これほと素晴らしいことがあるだろうか。
W.B.S.トーナメントの熱い想いを肌で感じ、
宮城に帰る車の中で、
来年もこのトーナメントのプレスをさせていただきたいと思い、
そしていつかこのトーナメントに参戦したいという想いが募った。
宮澤選手、並びにW.B.S.の皆様、感動をありがとうございました。