罵州雑言

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その402 巾着


 

 

霞ヶ浦の湖岸線のあちこちに巾着が投入されている。

巾着と言うのは、網の袋の中に割栗石を入れた簡易の防波資材である。

築堤を波浪の浸食から護るために投入される。

比較的、波浪が強い場所に入れられている。

これの正式名は、フィルターユニットエコグリーンと言うらしい。

 

この投入は、築堤を護るためだから仕方がないと言えばそうなのだが、

俺たち釣り人にするとテトラポッドの方が、

何十倍も釣り易いのは事実である。

なんたって割栗石が化学繊維の網に包まれているんだから、

ルアーが根掛かりしたら一巻の終わりである。

ルアーのロスト率が高まってしまうってぇことだからな。

 

しかし、その一方でこの巾着は、

水生植物にとっては恵みの施設になっている。

それまで波浪による影響で生えられなかった植物たちが、

少しずつ芽を出しているんだ。

 

 

402hishi

 

とある場所でヒシを見つけた。

たぶんヒメビシだと思うのだが、細々と生えていた。

巾着自体が今年の春にできたので、

このヒシも今年の生まれだと思われる。

いや、いや、元々あったものが芽吹いたんだろうね。

大したもんだ。

 

一方こちらはヤナギである。

これも恐らくは元々あったものが折られたか、

押し潰されたかしたのであろうが、

なんとはなしに生えて来たのであろう。

いや、いや、これまた見事なもんである。

 

 

402yanagi

 

こうして巾着による影響で植物が増えると言うことは、

それが外来種であろうと、在来種であろうと、

良いことだと俺は思うんだな。

植物が生えることで水質や水流に変化が起こったり、

昆虫類や動物たちが増えたりなど、

周辺が変わって来るからである。

 

もちろん、それらの影響が表れるのは何十年も、

何百年も先のことかもしれないが、

霞ヶ浦の水に大きな変化を与えることは確実である。

過去も未来も、霞ヶ浦の変遷や変貌を見つづけているのは、

筑波山だけである。

 

 

402tsukubasan

 

だからこそ、俺たちの世代に良かれと思うことをして行こう。

築堤前の巾着施工は、霞ヶ浦の築堤を波浪から守るための施行である。

多少の釣り辛さは我慢して、水生植物たちが育つことに目を向けよう。

やがてそこには多くの魚たちが棲むことだろう。

 

 

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